琴奨菊 10年ぶりの日本人V
「大相撲初場所・千秋楽」(24日、両国国技館)
大関琴奨菊が、大関豪栄道を突き落とし、14勝1敗で06年初場所の栃東(現玉ノ井親方)以来、日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした。31歳11カ月での初優勝は史上3位の年長記録で、大関在位26場所での初Vはもっとも遅い記録。32歳の誕生日を迎える30日、昨年7月に結婚した祐未夫人(29)との挙式披露宴に花を添えた。春場所(3月13日初日・エディオンアリーナ大阪)で初の綱とりに挑む。
琴奨菊が豪栄道を一気に寄り、投げ捨てた瞬間、10年の扉が開いた。館内は割れんばかりの拍手と歓声がこだました。観客席の父・菊次一典さん(60)は号泣。息子に相撲を教えた祖父・一男さんの遺影を握りしめていた。
夢にまで見た賜杯を抱いた。優勝インタビューでは終始、笑顔。ただ、両親のことを問われると「一番、つらい時に壁になり、支えてくれた。感謝の気持ちしかない」と、涙声になった。
「自分を信じてやるべきことをやる」。初日から一切の迷いがなかった。真っ向からの立ち合い、左を差してのがぶり寄り。10日目から3横綱を連破した。13日目に同期生、豊ノ島に不覚を取ったが、これも前に出た結果だった。
師匠・佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「先代(元横綱琴桜)は下がれば『バカヤロー!!』って言うけど『いい相撲』って言うでしょう」と思いを代弁した。
小学生の時、先代の師匠と出会い、素質にほれ込まれた。右肩、左膝の大ケガも「ケガは稽古で治すもの」と、先代の教え通りに乗り越えてきた。「1番(伝えたいの)はおじいちゃんと先代」。今場所、15日間、愚直に貫いた前に出る相撲。天国の2人の師にささげた。
祐未夫人との結婚披露宴にも花を添えた。昨年7月10日の入籍後「必ず優勝するから」と愛妻に誓った。毎日マッサージをしてくれた。頑張っている自身に、妻は「頑張って」と言わなかった。その気遣いに「孤独な戦いじゃない」と奮い立った。夫人は、2人のご褒美に「アロママッサージに行きたい」と、初デートの地をおねだりした。
八角理事長(元横綱北勝海)は「14勝1敗は立派。綱とりは内容次第」と、来場所が初の綱とりになると明言した。「あ~、長かった」。満開菊が10年間、和製力士の悔しさを晴らした。