白鵬変化でV36も謝罪「申し訳ない」
「大相撲春場所・千秋楽」(27日、エディオンアリーナ大阪)
結びの横綱対決で白鵬がまさかの変化を見せ、日馬富士を突き落しで下した。14勝1敗で4場所ぶり36度目の優勝を果たして、自身の持つ史上最多優勝記録を更新したが、館内は大ブーイングに包まれた。白鵬は優勝インタビューで観客に涙の謝罪をした。稀勢の里が豪栄道との大関決戦を制し13勝目をマーク。5月の夏場所は綱とり場所にはならないものの、好成績を挙げれば、場所後に横綱昇進の声が上がる可能性も出てきた。
これが“荒れる春場所”なのか。あろうことか優勝インタビューが謝罪の場に変わった。白鵬は「ああいう展開で決まるとは思わなかった。本当に申し訳なく思います。すいません」。左手で目頭を押さえ、こみあげる涙を隠すようにした。
大入り満員を記録した館内が一瞬絶句した。優勝が懸かった大一番。白鵬は立ち合い相手の顔の前に右手のひらを差し出し、次の瞬間に左へ飛んだ。横綱の“禁じ手”ともいえる変化。館内は「勝てば何をやってもいいのか!」などとやじやブーイングが飛び交う騒然とした雰囲気になり、座布団も飛んだ。
変化は勝ちたい気持ちの表れだった。昨年秋場所から3場所連続で優勝を逃がし、その秋場所では横綱昇進後初のけがによる休場も経験した。さらに日馬富士には過去3回の対戦すべて黒星。「あれ(変化)で決まるとは思っていなかった。2日目からいい相撲を取ってきて、千秋楽で崩れたと思う部分もあるが、ほっとしています」と本音を吐露した。
36回目の優勝は特別な意味もあった。父ムンフバトさん(74)は年に1度のモンゴル相撲で6回の優勝を誇る。白鵬は「日本の相撲は年6場所だから36回優勝して初めて親父に並ぶ」と解釈。この日、ついに偉大な母国の英雄に肩を並べた。
「(涙の意味は)やっと親父に並んだということもあるし、けがもあったし、いろいろこみ上げるものが重なった」。今後の目標には史上3人目となる通算勝ち星1000勝到達を掲げる。「次は目指せ1000勝ですね」。浪速の春を、よくも悪くも疾風のように駆け抜け、最強横綱がさらなる高みを目指す。