稀勢の里12連勝 白鵬と全勝対決へ
「大相撲夏場所・12日目」(19日、両国国技館)
14勝以上の優勝で横綱昇進の可能性がある稀勢の里が19日、照ノ富士との大関対決を押し出しで制し、無傷の12連勝と星を伸ばした。37回目の優勝を狙う横綱白鵬も大関豪栄道を引き落として無敗を死守。13日目は両者が結びの一番で直接対決する。横綱鶴竜が敗れて3敗に後退。2敗は横綱日馬富士だけとなり、賜杯争いは白鵬、稀勢の里、日馬富士の3人に絞られた。
初の賜杯へ、悲願の綱へ、稀勢の里がまた1歩近づいた。手負いの照ノ富士が相手でも、11日目までと同じように鏡のごとく静かな心に闘志の炎をともした。一度突っ掛けられた後の2度目の立ち合い。勢いよく踏み込んで、左をおっつけ、右の強烈なのど輪。相手の巨体をのけぞらせ、土俵の外へ押し出した。
左四つに徹し、初日からの連勝を12に伸ばした。支度部屋へ戻ると、いつものように小さな声で「(当たりは)よかった。(立ち合いのタイミングも)いいんじゃないですか。(左から厳しく攻めることができて)よかったです」と冷静に取組を振り返った。
勝ち越しを決めた8日目、父・貞彦さんから「よかった」とメールが届いた。返信は「分かった」。まだ道半ば、勝ち越しで喜んでいられないと、男の決意を短い言葉に込めた。この日、貞彦さんは「股関節と体幹を鍛え、弱かった下半身が強くなった。それが自信になり、精神的に安定してきた」と目を細めて話した。
13日目は結びで白鵬と全勝対決。勝てば初優勝と綱とりへ大きく前進する相撲人生最大の大一番となる。八角理事長(元横綱北勝海)は「左四つになっても自分から動かなければ。それで負けたら仕方がない」と厳しい見方だが「体の状態はいい。集中してやっていくだけ」。もうチャンスは逃さない。