金本先生が熱弁!藤浪よ勘違いするな
昨季限りで現役を引退した金本知憲氏(44)=デイリースポーツ評論家=が19日、西宮市の選手寮「虎風荘」で新人を含む若手選手、スタッフを相手に約1時間の講義を行った。藤浪、北條ら新人には「騒がれても、勘違いをしないで欲しい」と説き、過去のデータを交えながら、プロで生き抜くための心得を授けた。
藤浪と目が合った。北條の視線を感じた。アニキが26歳年下の大物新人に、穏やかな口調で語りかけた。
「まだプロの世界で何もしていないのに毎日新聞に出たり、ちやほやされることは、タイガースの悪(あ)しき環境。ドラフト1位というだけで騒がれることを、恥ずかしい!もうやめてくれ!と思って欲しい。そんなことで絶対に勘違いしないように、と。グラウンドで結果を残したときにはじめて評価してもらって、喜びを感じればいい」
新人6人を含む若手22選手。スタッフをあわせて35人が真剣なまなざしで「金本先生」の講義に聞き入った。教壇のアニキから逆に質問した選手は4~5人。その中に緊張の面持ちを浮かべる藤浪と北條がいた。
「過去20年間で134人の選手がタイガースに入って、そのうち、まあまあできたかなという選手が22人。一流になったといえる選手は10人しかいない。ドラフト1位の選手は(20年間に)23人いるけど、12~13人は全く1軍に姿を見せずに終わっている。それも現実なんです」
南球団社長からの講義依頼を快諾した金本氏は、過去の資料をもとに阪神の歴史を探った。なぜ、一流が育たないのか。人気球団ゆえの弊害もある。現役時代から疑問に感じていた事象に目を向け、具体的なデータを伝えることで若手選手に意識改革を求めた。それは「阪神でいい思いをさせてもらった」というアニキ流の恩返しでもある。
「自分の持っているものを7~8割じゃなしに、10割。すべて出して欲しいと伝えた。タイガースはプロ野球を引っ張っていく立場。生え抜きを育てなきゃいけない。自分にできることがあればという思いはある」 約1時間の講義を終えた金本氏は玄関で見送る藤浪を握手で激励した。「新聞で見るより男前だったな」。日本のエースに!大きく育て!ドラフト時に直筆でしたためた色紙は今、藤浪の部屋に飾られている。愛情たっぷりの授業は18歳の胸にズシリと響いたはずだ。