「阪神春季キャンプ」（４日、宜野座）

　阪神・松田遼馬投手（１８）が４日、フリー打撃に初登板してマット・マートン外野手（３１）、新外国人のブルックス・コンラッド内野手（３３）に５５球を投じ、ヒット性の当たりを６本に抑え込む快投を見せた。マートンは威力ある速球のスピードを推定１４８キロと証言し、和田豊監督（５０）も評価を上げた。“ポスト球児”と期待される右腕が１軍生き残りへ、アピールに成功した。

　計り知れない強心臓ぶりだった。プロ初の１軍春季キャンプで、初のフリー打撃登板。相手はマートンとコンラッド。打撃ケージの後方には和田監督ら首脳陣が陣取り、福留らも見つめた。

　「緊張がなかったわけじゃないけど、緊張している場合じゃない。やることをやろうと思った。（周囲の人が）目に入ったけど、それでも僕は結果を出さないといけないので」。松田は萎縮してもおかしくない舞台で躍動した。

　偉大な先輩に負けない“火の玉”で魅せた。最初はマートンと対戦。２球目に高めの直球で空振りを奪うと、４球目までケージから打球を出させなかった。２４球目に左翼席へ一発を運ばれたが、２９球で安打性は４本。１０年に２１４安打を放った安打製造機は日本語で「メイビー１４８キロ。スゴイ。マツダ、イイマッスグネ」と目を丸くした。

　コンラッドも２６球で安打性は２本。右翼席への一発以外はほぼ完璧に抑え込んだ。２人への投球の大半は直球。最大の武器とするストレートのアピールに成功した右腕は「（マートンの空振りは）自信になったというか、いい感じをつかめてよかった。外国人と対戦できるのは勉強になる。高めに浮いたら持っていかれるのも分かった」と初々しい笑顔を見せた。

　和田監督は堂々とした投球内容に目を奪われた。「初めてのマウンドで、あれだけすっとストライクを取れるのはね。マウンド度胸を感じる。中継ぎということで非常に楽しみ。いいものを見せてくれた」。８日に１９歳を迎える背番号５６が次回はどれだけ成長しているのか。指揮官は６日のシート打撃、１０日の練習試合・日本ハム戦での登板を心待ちにした。

　他球団へのインパクトも十分だった。初めて生で投球を見たヤクルトの志田スコアラーは「首脳陣が見ている前で、実績のある打者に投げられたことは評価できる。実戦向きかな。藤浪くんだけに焦点を絞るとやられる」。巨人の三井統括ディレクターも「高校時代から見ているけど順調に成長している」と警戒を強めた。

　フリー打撃で打者が交代する際、中西投手コーチからフォームを修正される場面があった。変化球の精度など課題も多い。だが、松田にはそれを上回る魅力がある。底知れぬ可能性を感じさせる５５球だった。