良太、能見から一発!4番へ猛アピール
「阪神春季キャンプ」(6日、宜野座)
新井良太内野手(29)が今キャンプ初実戦となったシート打撃で、エース能見から宜野座村野球場の左翼席へ、13年の“虎1号”を放った。シートでは3投手を相手に4打数1安打。残り3打席の凡退を悔やんだが、レギュラーだけでなく昨季に続く4番奪取に燃える男が、和田監督の前で猛アピールに成功。この日、阪神は6日間の第1クールを終了した。
最悪の船出を完ぺきに振り払った。仕留めたのは日本代表左腕の直球。定規で引いたような弾丸ライナーが、雨上がりの左翼芝生席をえぐった。
「手応えはあった。打球が低かったので、入るかどうか分からなかったけど、能見さんの力のあるまっすぐを引っ張れたのは良かった」
13年の虎1号は良太のフルスイングから生まれた。2ボール1ストライクからの4球目。捕手清水が「少し甘く入った」と振り返る139キロの内角直球を完ぺきに仕留めた。能見の初登板を迎え撃ったのは昨季の4番。初打席で一邪飛に抑えられ、迎えた2度目の対戦で雪辱した。3投手に対し4打数1安打。「変化球を打てなかったのが課題」と、残り3打席の凡退を反省したが、WBCに備えるエースから初実戦の主役の座を奪った。
「打てるところに投げてやったんだよ」。能見から冗談まじりにイジられた良太は謙虚に「その通りだと思う」と、取り囲んだ報道陣の前で笑みひとつこぼさなかった。
昨季途中から4番に定着したが、大補強に踏み切った新生阪神ではレギュラーを保証されない立場。新聞紙上の開幕予想オーダーに「新井良」の名前はなく、日本球界で実績のない新外国人コンラッドが4番サードの筆頭候補だ。「いいじゃないですか。それもモチベーションになる」と奮起を誓ってオフを過ごした。引っ張りだこだったイベントには積極的に参加しながら「そういう場所に呼んでもらうたびに、勘違いするなよと自分に言い聞かせる。足もとを見つめ直す機会になった」と発想を転換した。
オフは広島のジムと甲子園を往復しながらウエートトレで筋力増量に励んだ。昨年12月7日に計測した肉体の数値は約1カ月後には数段アップ。体重は99・8キロから102・7キロに。胸囲は5センチ、両上腕、両太ももはそれぞれ1センチ大きくなった。
和田監督は「ほぼ仕上がりつつある能見のまっすぐをさばけたのが良かった。打席での気迫、オーラ、打ってやるぞというものが出ている」と手放しで称賛した。1月下旬に体調を崩し、マスク姿で沖縄入り。キャンプ前は「最悪のスタート」と沈んでいたが、もう全開だ。コンラッドの目の前で魅せた名刺代わりの一発。「今季も4番を打ちたい」。球団の構想を覆すでっかい欲が、良太を突き動かす原動力だ。