“速攻の猛虎” 初回にいきなり7得点
「オープン戦、ヤクルト8‐8阪神」(24日、浦添)
阪神が初回、打者12人、7者連続得点の猛攻。開幕カードのヤクルトを相手に見事な波状攻撃を見せた。5安打だけでなく4四球を選び、すきのない走塁も見せた初回の29分。いやらしさを兼ね備えた“速攻の猛虎”は、進化の証しだ。
一回表の攻撃に費やした29分間‐。何度も何度も六甲おろしが浦添に鳴り響いた。3月29日に開幕戦を戦うヤクルト相手に、トップバッターの上本から始まった打者12人、7者連続得点の猛攻。福留は「よーい、ドンで相手にイヤな印象を与えられたでしょう」と不敵に言う。
それほど内容が濃く、虎のいやらしさを感じさせた波状攻撃。まず先頭の上本が四球を選んで出塁すると、ベンチは続く大和に初球エンドランを命じた。これが投手強襲安打となってチャンスを拡大すると、西岡が「右を狙えばゲッツーはない。悪くても一、三塁にはなる。そこらへんは状況に応じて」と内角直球を巧みな技術で右前へ落とした。
いきなり無死満塁のビッグチャンス。ここで4番・新井良が追い込まれながらも、右前へ落とし2者を招き入れた。続く福留、マートンはきっちりボールを見極めて連続四球でつなぐと、コンラッドはストライクを先行させようとする八木の2球目、内角直球に食らいついた。
バットを折りながら中前へ運ぶ2点タイムリー。浅い打球だったが、二塁走者の福留が好走塁で生還。さらに打者一巡して上本が左前2点打を放った際も、ミレッジが本塁へ返球するスキを突いて一塁走者の藤井、そして上本が次の塁を積極的に奪った。
ソツのない攻撃、各打者が後ろにつなぐ徹底した意識。「そういうのが良い形で出てきよったな」と水谷チーフ打撃コーチが振り返ったように、今季は“速攻型”の試合が目立つ。
対外試合7試合で奪った52点中、序盤3回までの得点は半分に近い24点。まだ調整段階で、試合の前半に主力が出場して後半は若手中心というケースを加味しても、鳥谷不在の影響をまったく感じさせない新打線。上本、大和の1、2番コンビが成長し、福留、西岡という新たなスパイスが加わった。
さらに復活を期すマートン、飛躍を目指す新井良、そして新加入のコンラッド。猛虎打線の中核を担う選手たちが、個々の役割を果たすことで織りなすハーモニーは、大きな可能性を感じさせる。沖縄でのオープン戦2試合で見せた和田阪神の進化。“初回の虎”という確かな手応えを持って、大阪へ帰る。