福留鮮やか!移籍後甲子園初安打&打点

 「オープン戦、阪神4‐3ロッテ」(7日、甲子園)

 どや、見たか‐。阪神・福留孝介外野手(35)が7日、ロッテ戦の六回、移籍後の聖地初安打&初打点となる決勝の適時二塁打を放った。坂井オーナーが初観戦に訪れた直後の一打。中日時代の02、06年に首位打者を獲得した男は、やっぱり持ってる。

 空席が恨めしい。満員に埋まった舞台だったら、再出発を飾る一打をどんなに祝福できたか。新たな戦闘服をタテジマに求めた福留がオープン戦破竹の4連勝を導いた。阪神移籍後の聖地初安打に初打点、決勝打の彩りを添えてみせた。

 迷いなく初球を振った。同点の六回、無死一塁。ゴンザレスの143キロ直球。低い角度で飛び出した白球が二塁手の頭上を越え、中堅右に弾む。軽やかなステップワークで二塁を陥れる間に、一走・新井良が決勝の本塁を駆け抜けた。

 前日から通算6打席目に生まれた聖地初安打。代走を告げられ、小走りでベンチに戻る背番号8の正面、背後から歓声が包む。ナインとのハイタッチ。仕事を成し遂げた男の表情筋が緩み、自然と右手に力がこもった。

 「出たというだけです。練習の時からいろいろやってるんで。タイミングだったり、自分の感覚だったり。感じ的には悪くなかったんで。いい形のアウトであれば、結果を求めてるわけでもないので」。ひと呼吸置き、ロッカーへ引き揚げた福留は、いつも通りのクールな口調で劇打を振り返った。

 メジャー挑戦前の中日時代もそうだった。他人を上回る破格の練習量を努力と呼ばなかった。好調におごらず、調子を落とし、数字を残せない時も、泣き言は一切、漏らさなかった。毅然(きぜん)とした立ち居振る舞いがプロのあるべき姿だという信念を感じさせた。

 4月に36歳を迎える自らを3年契約の厚遇で迎えてくれた。恥ずかしい成績は残せない。5年間のブランクと統一球に対応するため、キャンプ中から試行錯誤を繰り返して、打撃フォームに手を加えてきた。才能プラス努力でステータスを築いた流儀を貫いている。

 「この1本で気分的にもスッキリするだろう。結果としてH(ランプ)がつくかどうかで違うし。内容から心配はしてなかったけど」。タイプは違うが、同じ安打製造機として名をはせた心理を和田監督が代弁した。

 たかが1本、されど1本。ネット裏の坂井オーナー、和田監督、ファン、そして福留が安どした3月7日。開幕まで3週間。徐々に臨戦態勢は整いつつある。

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