「ヤクルト３-９阪神」（２９日、神宮）

　歓喜の握手を交わす右手に力がこもる。就任２年目の船出を飾る開幕星。新生・猛虎打線が敵地に刻んだ確かな足跡。兵をたたえる阪神・和田監督の表情が緩む。スタンドから降り注ぐ和田コール。虎将が大きく手を挙げた。

　３点リードを追いつかれた直後に勝ち越し、一気に突き放した開幕戦の球団タイ記録に並ぶ１７安打、９得点の劇勝。得点力不足に泣いた昨年の暗い影はどこにも見当たらない。これが猛虎の金看板を取り戻したタテジマのポテンシャルだ。

　「今日は全員の勝利。誰がというより、みんながしっかり仕事をしてくれた。館山のゲームで勝てたことが大きいよね」。将の声が弾んだ。

　開幕の朝、和田監督は神田明神を訪れた。４球団の競合の末、藤浪を引き当てた昨秋のドラフト会議当日にも良縁を祈願した場所。手水舎で左右の手を清め、拝殿で心を静め、必勝を祈願した。

　「勝負事の前はこれだろ」と昼食にはカツ丼を選んだ。宿舎では赤飯と鯛の尾頭付きにはしを伸ばし、乳酸飲料のヤクルトを一気に飲み干した。出陣式では「勝つことも負けることもあるけど、目指すところはブレずに戦い抜こう」と選手の士気を鼓舞した。８年ぶりのリーグ制覇に向けて踏み出した力強い一歩。六甲おろしの大合唱が心地よく耳にこだました。