豪打一転…完封負けも和田監督焦りなし
「ヤクルト1-0阪神」(30日、神宮)
花冷えの神宮。スコアボードに並んだ9個のゼロが、震える寒さに拍車を掛けた。阪神は、開幕戦の球団記録に並ぶ前夜の17安打劇勝から一転、3安打完封負け。1点がとてつもなく重く、遠かった。新生・猛虎打線が敵地の海に沈んだ。
願っても戻らない時計の針が恨めしい。振り返れば、唯一にして最大のチャンスをモノにできなかったことが、敗北へ直結した。敵失も絡んだ初回、1死満塁の絶好機。福留が空振り三振。マートンが左飛。失意のため息が左翼席を包んだ。
「初回だな。あそこで流れを持ってこれなかったのが一番の要因。初回はバタバタしてたし、つけ入るスキもあったけど、立ち直らせてしまった」。今季初黒星を喫した一戦を振り返る和田監督が唇をかんだ。
打つ手も裏目に出た。七回、1死一塁。1ボールからの2球目に仕掛けたヒットエンドラン。直前にけん制球を挟み、マートンの帰塁する姿に気配を察した相手バッテリーはピッチドアウト。藤井彰はバットを放り投げて当てにいったが空振りでマートンは死んだ。
「完全に相手に読まれてしまった」と黒田ヘッドコーチ。ただ和田監督は「お互いに考えてる。外されたけど、もうやらないというわけじゃない。これからも使っていく作戦」と今回の失敗を次回の成功への礎とする決意を示した。
嘆き、悲しむ必要はない。敗れた事実は変わらないが、敗北に学び、得た収穫もあるはず。久々の対戦となった西岡、福留に加え、初対決となったコンラッドは石川の球筋を脳裏に刻んだ。目と体で感じたデータは、必ずやリベンジマッチに生かされる。
九回に新井良が内野安打で出塁し、レギュラー全員がHランプをともした。これで地に足を着けられる。「昨日打って、今日打てないこともあるけど、しっかりした野球はできてるから、バタバタすることはない」と和田監督。岩田を見殺しにした借りは決して忘れない。