榎田先発初星&史上初G3連戦無失点!
「阪神3‐0巨人」(11日、甲子園)
季節外れの寒さを吹き飛ばす、熱いゲームだった。阪神が榎田大樹投手(26)以下、3投手のリレーで巨人を無得点に封じた。阪神が、巨人3連戦で全試合無失点だったのは史上初。今季初のカード勝ち越しで、勝率は5割に復帰した。
真っさらなマウンドに立ちたかった。きれいに整地された甲子園のマウンドに立ちたかった。その思いを抱き続けた榎田が、こじ開けた重い歴史の扉‐。手にした勲章は先発初勝利だけではない。長い歴史を誇る伝統の一戦で、同一カード3連戦すべてを完封したのは史上初の快挙だ。
第1戦、第2戦の無失点リレーは、憧れの場所に立つと、頭から消えた。「とにかく1イニング、1イニングという気持ち」と一切の雑念を排除した。
初回、1死二塁のピンチを招いたが「良い打者ほど内角を攻めないといけない」と初球から坂本の懐をえぐった。中飛に仕留めると、続く村田も徹底して内角を攻めた。最後は内角140キロの直球で詰まらせ力のない投直。この1球で榎田は勢いに乗った。
社会人時代に培ったテンポの良い投球、正確なコーナーワーク。緩急自在の左腕は、淡々とスコアボードにゼロを並べ続けた。七回まで許した安打は初回の1本だけだった。
球数が120球を超えた八回、2死から実松に左中間二塁打、代打・阿部に四球を与えたところでマウンドを福原に譲った。「中継ぎをやってた大変さを知ってるので、回終わりまで投げたかった」。それでも2度の先発で防御率は0・00。文句のつけようがない。
和田監督も「榎田らしい。あれだけコントロールされるとリズムも出てくる」と目を細める。プロ入りから2年間、榎田に与えられた場所は中継ぎ。チームのため、懸命に投げ続ける日々。しかし、いつしか左肘に激痛が走るようになった。
「その日、投げてみないと分からない」。左肘が痛まない投げ位置を探した。その結果、昨季夏場には投球フォームを見失った。決断した左肘の手術‐。ただプロ入りから「リリーフ肩にならないように」と、いつか憧れの先発マウンドに立つため、肩の柔軟性を養うトレーニングを怠らなかった。その姿を知るからこそ、スタッフも全力で左腕の再出発を支えた。
後を受けた福原、久保もバトンをつなぎ、巨人3連戦で30イニング連続無失点。宿敵・巨人に連勝、そして今季初のカード勝ち越しを決めた。
たとえどんな場所でも、どんな状況でもぶれなかった榎田の思い‐。その強い信念が鍵となり、伝説の1ページが新たに刻まれた。