福留、超美技&快打で後輩・榎田救った
「阪神3‐0巨人」(11日、甲子園)
これぞプロだ。阪神・福留が超ド級のスーパープレーでチームを救った。
五回無死。ロペスが右中間へのライナーを放つ。打った瞬間、甲子園が悲鳴に包まれた。誰もが安打を覚悟した打球。福留だけは冷静だった。
「風もあるし、右打者の打球なので切れながら来るというのは頭にあった。届きそうだったので思い切っていった」
最短距離で落下点まで走ると、完璧なタイミングでダイビングキャッチ。ただ、着地と同時に胸を強打した。その場で顔をゆがめてもん絶。駆け寄った西岡に手を引かれて起こされるまで、立ち上がれなかった。まさに捨て身のプレーだった。
状況的にも価値があった。四回1死二塁の好機を逃した直後で、五回の先者の出塁を阻止。和田監督は「大きかった。これでいけるという雰囲気になった」。勝負を分けた好守だった。
試合前には恩人が練習を見つめていた。元ミズノのグラブ職人・坪田信義氏(80)。同氏は08年に退社するまでイチロー(現ヤンキース)ら名選手のグラブを手がけてきた名人として知られている。
内野手としてプロ入りした福留も外野手転向後の06、07年に坪田氏にグラブの作製を依頼している。「『軽く、柔らかく、よく開く』。手の動きについてくるのがイチロー選手の形。福留選手はそれをモデルにして作ってほしいということだった」と同氏は振り返る。
イチローモデルの網の部分をアレンジしたグラブは、現在も使用するグラブの原型。一流の右翼手としての地位を築いた相棒で、この日のビッグプレーを生み出した。
八回2死一、二塁はダメ押しの右前適時打。故郷、鹿児島の後輩・榎田と甲子園で初めてお立ち台に上がると、今度はスタンドを笑わせた。
「ムチ打ちですね。あしたの朝、起きられるか心配です。ちょっと思い切っていきすぎたんで」
首と背中に痛みがあるため、12日のDeNA戦に不安は残す。それでも「みんな目いっぱいやっているんでね」。チームのために自らを奮い立たせた。