「阪神４-０ＤｅＮＡ」（１４日、甲子園）

　力強く振り下ろした右拳‐。１点でも多く阪神・藤浪を援護してあげたかった。もう、投手を泣かせる展開にはしたくなかった。五回、タイムリーを放った直後に西岡が見せたこん身のガッツポーズ。先制、中押し、ダメ押しと１人でＤｅＮＡを切り裂いたスピードスターが、後輩の背中を力強く押し、初勝利へ導いた。

　四回の第２打席。「三浦さんの技術にやられていた」と打球はどん詰まりの遊ゴロだったが、飛んだコースが良く、快足を飛ばして内野安打に変えた。大和の犠打、ブランコの失策で先制のホームを踏むと、続く五回２死二塁の場面では追い込まれながらも、低めの変化球をはじき返して二遊間を破った。

　「何とかしっかり捉えようと。タイミングを早くとっていった」と１、２打席の打撃内容を反省して生み出した貴重なタイムリー。さらに続く大和の初球に移籍後初盗塁となる二盗を決め、連続タイムリーを誘発。それでも「あそこはイケイケ。本当は開幕からもっとアグレッシブに行かないといけなかった」と冷静に振り返る。

　第２戦では初回に痛恨のタイムリーエラーを犯した。「最低です」と自らを責めた。この日の試合前練習、久慈内野守備走塁コーチとイレギュラーに対応できる捕球姿勢の改善に取り組んでいた西岡。「だいぶ良くなった」と同コーチが目を細めたように、地道に、愚直に、前日のミスを修正しようと必死にノックのボールを追った。

　タイムリーにも表れていたように、失敗を受け止め、次に修正する力を持つ背番号７。４度の守備機会も軽快にさばいて見せた。和田監督が「昨日、しでかしたんだけど、その後に必ず活躍する選手」と評価する背景には、失敗を決してムダにしない姿勢がある。

　お立ち台では締めに藤浪の頭をはたいて、満員の聖地を沸かせた。開幕第３戦、後輩を援護できず語気を強めて悔しさをあらわにしていた西岡‐。頼れる先輩が、忘れられない１勝を演出してくれた。