新井が意地の初マルチ 開幕以来の適時打
「巨人4‐2阪神」(16日、東京ド)
このまま終わるわけにはいかなかった。四回以降、1人の走者も出せない苦しい展開‐。九回1死からの第4打席、阪神・新井が巨人の守護神・西村に追い込まれながらも、外角低めのスライダーをつかまえた。今季初マルチとなる左前打。逆転には結びつかなかったが、復活を期す男のバットに確かな兆しが出始めている。
1点リードの三回、2死満塁の場面では宮国の外角直球に最短距離でバットを出して痛烈に右前へはじき返した。開幕戦以来のタイムリー。直前には、もう少しで満塁弾という大飛球を左翼へ放っていたが「ああいう打球のあとなんで、欲張りすぎないようにと意識していた」。コンパクトに鋭く振り抜いたスイングは、キャンプから水谷チーフ打撃コーチと取り組んできた努力の結晶だ。
「だいぶ打てるような格好になってきている」と同コーチが目を細めるように、開幕から休日を返上して室内練習場で打ち込んできた。時には球数が700球を超えることもあった。猛練習を課して数々の強打者を育ててきた名伯楽が「ずっと見てて、目の前が真っ白になりそうやったわ。それくらいあいつは量を振ってる」と明かしたほど。前日も1人、甲子園で打ち込みを行ってから東京に入った。
確かな感触 一時は巨人を突き放す貴重な適時打に「自分のスイングができた」と確かな感触を口にした。第4打席の左前打も体勢を崩そうとしてくる相手バッテリーの配球に負けず、「(状態は)良くなってきているんじゃないかな」と言う。
開幕から上位打線がしっかり機能している半面、5番以降の調子がなかなか上がってこなかった。その中で6番の新井が復調の気配を見せてきたことは、敗戦の中でも大きな収穫だ。
また四回以降、無安打のまま終わるよりも、反撃の姿勢を示したことで前を向ける。「また…また明日」と前だけを見つめて帰りのバスへ歩みを進めた新井。今季初のマルチ安打は必ず、第2戦へつながる。