サンテレビ阪神戦中継3000試合到達
阪神戦の完全中継で地元ファンから愛され続けてきたサンテレビ(神戸市中央区)が、25日の中日(6)戦(ナゴヤドーム)で、空前絶後の中継3000試合を迎える。開局1年目の1969年5月6日・広島戦から数えて、足かけ45シーズンにわたり猛虎と共に歩んできた名物中継『サンテレビボックス席』。通算3002試合目となる4月29日(祝・月)の広島戦では「3000試合記念中継」と併せ、デイリースポーツ評論家・岡田彰布氏や掛布雅之氏らが出演するスペシャル番組も放送される。
江夏‐田淵の黄金バッテリーに始まり、掛布、岡田、真弓らの“85年日本一軍団”や“カメシンブーム”を巻き起こした亀山、新庄らを経て、2003年の星野、05年の岡田両監督のリーグ制覇から現在に至るまで、サンテレビは常に猛虎に寄り添った中継を続けてきた。1969年5月1日に開局し、その5日後の広島戦(甲子園)から始まったテレビ局初の完全中継。45シーズン目にして、ついに『3000』の節目を迎えた。
中継1試合目の実況は松島武雄アナウンサーで解説は元阪急の盗塁王、ロベルト・バルボン氏。以後、長年サンの野球中継を支えた西澤暲アナウンサーの他、NHKの名アナだった岡田実氏や土門正夫氏らを加え、独自の中継スタイルを築いてきた。入社10年目の88年からスタッフに加わり、現在もその中心で活躍する谷口英明アナ(現報道制作局アナウンス室室長)は、阪神戦全中継の約10分の1にあたる300試合の実況を担当。過去を振り返り、こう話した。
「昔と今では選手の気質もファンの層も随分変わりましたね。昔は大人の男性ばかりでしたが、今はファミリーや女性も多い。そんなファン層の拡大に貢献してきたという自負はあります」
南海ファンだったという自身もサンテレビの中継の影響で“ミスタータイガース”田淵幸一(現野球評論家)を愛する熱烈な虎党に鞍替えし、そして同局入社に至った。そんな谷口アナが選んだ中継ベスト試合は、岡田阪神がリーグ優勝を果たした2005年9月29日の巨人戦。何から何まで“筋書き通り”に運んだ中継だったという。
「先発下柳で終盤JFKにつないで胴上げ…。頭の中で絵を描いていたんですが、本当にその通りになった。現場での中継が終わる午後9時20分までに優勝インタビューや場内一周も全て見せることができました。自分にとっても念願の阪神Vの瞬間を伝えられたし、ましてそれが宿敵巨人が相手で甲子園でしたから…。燃え尽きた感じになりましたね(笑)」
谷口アナは1998年5月26日の『川尻ノーヒットノーラン』や、91年10月13日のダブルヘッダー『山本カープ優勝』を思い出の中継に挙げる。だが、サンテレビには平均視聴率28%を叩き出した“伝説の一戦”が燦然(さんぜん)と輝いている。1992年9月11日・ヤクルト戦(甲子園)だ。
“サンテレビの9・11”と言われるこのヤクルト戦は、八木の“幻のホームラン”などで6時間26分という史上最長試合となった。中継終了は日付が変わった午前0時41分。史上最長放送を実現したサンの名は、全国にとどろくことになった。
愛の完全中継 「タイガースがある限り、どこまでも試合終了まで中継をするというポリシーはこれからも変わりません」とは編成局・江副純夫局長。区切りの3000試合を迎えてもスタンスは同じ。猛虎を愛し、猛虎を愛する視聴者を愛して完全中継‐。地上波中継が消えつつある今、サンテレビの放つ光は文字通り“太陽級”と言っていい。