福留2107日ぶりナゴヤドームで意地打
「中日15‐3阪神」(23日、ナゴド)
懐かしい匂いが鼻腔(びこう)をくすぐる。目に映る景色は栄光の記憶をよみがえらせた。中日時代の07年7月17日のヤクルト戦以来2107日ぶりで、日本球界復帰後初がい旋のナゴヤドーム。阪神・福留が古巣の地元ファンの前で、あいさつ代わりの適時二塁打を放った。
七回2死一、二塁だった。吉見の真ん中高めの直球を力強く振り抜いた。乾いた打球音を残した白球は大きな弧を描き、右中間フェンス上部を直撃した。
あと数十センチで本塁打だった圧巻の弾道。背番号8に球場全体の歓声が降り注いだ。水谷チーフ打撃コーチも「しっかりしたスイングができている。すごい打球やったやろ?」と評価する一打だった。
中日に在籍した99~07年までの9年間もナゴヤドームを得意としていた。通算509試合に出場して打率・318、83本塁打、292打点。今回の中日3連戦でのキーマンに挙げていた和田監督の前で、相変わらずの相性を見せつけた。
だが、福留は大敗を悔しがっていた。試合後は打撃の内容を問われると「(スタンドに)入ってない」とぶ然とした表情。その後も質問を遮るように足早にバスへと乗り込んだ。
それだけ試合にのめり込んでいた。五回の守備終了後。1イニングで8失点した久保田が三塁ベンチに戻ろうとした際、その頭上から一部のファンがヤジを飛ばし続けていた。
不満や怒りは理解できても、心ない言葉は許せない。いったんはベンチに戻っていた福留は目に余るヤジに対し、きびすを返して言い返した。ファンを大切にする男だからこそ、あえてき然とした態度を取った。
後味の悪さも残る大敗。だが、引きずってはいられない。再スタートとなる一戦。背番号8が勝利へ導く。