新井、得意の西武Dでダメ押し7号弾!
「交流戦、西武5‐10阪神」(19日、西武ド)
球団スタッフの掛け声が西武ドームの長い通路に響いた。「もう誰も残ってませんね~」。試合後の点呼。監督、首脳陣、選手とバスへと続く列がパタッと途絶えた。ヒーローインタビューを終えた鳥谷が最後尾と勘違いした東マネジャーの後を追って、阪神・新井がロッカールームを出た。
「良かったですね…」
急ぎ足で上る階段で息を切らせた。額に汗。右手にダイエットコークを握り、今季7号の感想をひと言でまとめた。3時間44分に及んだ乱戦で試合を決定づけたのは、お兄ちゃんの胸のすくようなフルスイングだった。
7‐5と2点リードの六回。一塁に四球の鳥谷を置き、西武3番手・岩尾の抜けたフォークボールを捉えた。弾道は低空のライナーで獅子党陣取る左翼芝生席へズドン。リードを4点に広げるダメ押し2ランで交流戦初の先勝をたぐり寄せた。
「追い込まれていたし、余計なことは考えなかった。フォークがシュート回転して高めにきた。しっかりスイングできたと思う」。前日のソフトバンク戦で連続安打が13試合で途絶えたが、場所を恵方に移して再爆発。阪神移籍後の打率・375と相性抜群の地で景気よくリスタートした。
この日の試合前練習に新井の姿は、なかったかもしれない。前夜、試合後に神戸市内で家族と食事を共にした。夜8時半を回ったころ、裕美子夫人から「新幹線、間に合うの?」と聞かれ、「大丈夫」と答えたが、最終便の時刻を30分勘違いしていた。「え!今、何時?」と大慌てで新神戸駅を目指し、21時過ぎの「のぞみ」に飛び乗った。
この日の始発に乗車しても、東京から1時間以上要する所沢の試合前練習には間に合わない。あわや大遅刻のドタバタ移動。時折のぞかせる天然な性格も新井らしさだ。
ちょっとのんびりなお兄ちゃんも、戦闘態勢に入れば頼もしい。7本塁打、26打点、そして・364の得点圏打率を合わせると、チーム3冠の貢献度を誇る。この日2打点でプロ通算998打点。節目の1000打点まであと「2」に迫った。「しっかり積み上げていきたい」。その頼もしい言葉に風格が漂った。