鳥谷が逆転V打で天敵・涌井攻略
「交流戦、西武5‐10阪神」(19日、西武ド)
阪神が今季5度目の2桁得点で逆転勝ち。連勝を決めた。3点を追う四回、2つの押し出し四球で1点差に迫ると、鳥谷敬内野手(31)が右線へ逆転の2点二塁打を放った。この回、一気に5点を奪う猛攻。これまで5戦全敗だった西武・涌井を初めて攻略した。交流戦開幕3連敗の後の連勝。今年の虎はひと味違う。
ネクストから打席に向かうまでの約10メートル。鳥谷は一つ、一つ、的を絞り込んでいった。ストレートの押し出し四球を与えた投手が次打者の初球に欲するのは‐。相手の心理を読み切った。まるで“待ってました”と言わんばかりに初球の甘い直球を引っぱたいた。
打球は猛烈な勢いで右翼線を破る逆転の2点二塁打。「みんなが四球、四球でつないでくれたチャンスだったので、何とか打ちたかった」と振り返った場面は3点を追う四回だった。
無死満塁から西岡が押し出し四球を選んだ。ここで投手が坂元に代わったが、悪循環を引きずるように大和にもストレートの押し出し四球を与えた。「相手投手もストライクを取るのに苦労していたので。タイミングがあえば初球から行く」と覚悟を決めていた鳥谷。136キロの甘い直球を一振りで仕留め、一気に試合をひっくり返した。
過去5戦5敗だった涌井を沈め、今季、打点を挙げれば9戦負けなしというキャプテンの一打。触発された猛虎打線は、交流戦では6年ぶりとなる2ケタ10得点をマークした。摂津、涌井とパ・リーグを代表する投手を攻略し「相手どうこうと言うより、勝つことが大きい」と言い切る。
思い出の地で得た確かな手応え‐。幼少期、鳥谷は西武球場で秋山、清原、デストラーデら黄金時代のライオンズに心を躍らせた。常勝軍団が魅せるプレーに、目を奪われた日曜日のデーゲーム。「当時、屋根はなかったですけどね」と心なしか、懐かしそうな表情を浮かべる。
心に残る“カッコ良い”プロ野球選手。今季、鳥谷はグリップにオレンジを配色したツートンカラーのバットを使っている。昨オフ、契約メーカーのナイキに「誰も使っていないモノが欲しい」と発注した。
過去に類を見ない奇抜なバット。それでも鳥谷が使えば何の違和感もない。技術だけでなくスタイルにもこだわるヒーローを待ちわびる子供たちの歓声が、インタビュー直前の西武ドームに響いていた。「応援が力になるし、後押ししてくれる。借金が1つあるので、明日勝って、千葉に行きたい」と誓ったキャプテン。その背番号1が最も、力強く、“カッコ良く”映えた。