虎5点差守れず…5時間12分悪夢ドロー
「交流戦、ロッテ6‐6阪神」(22日、QVC)
負けなかったからよかった…。いや、勝てた試合だった。阪神が最大5点リードを追いつかれて、セ・パ、交流戦合わせて今季最長となる5時間12分、延長十二回を引き分けた。2点リードの九回に守護神、久保康友投手(32)がロッテ・井口に同点2ランを打たれた。今季延長戦は5度目で無敗(3勝2分け)だが、17安打しながら得点の好機を逃すなど、課題を残した試合となった。
願っても戻らない時計の針が恨めしい。勝利の可能性が消えた延長十二回裏。必死に声をからし、タテジマの背中を押し続けたファンが次々に席を立った。マリンの落とし穴‐。5点差を守り切れなかった5時間12分のドロー劇。敗北感に似た徒労感が猛虎ベンチを包んだ。
野球は筋書きのないドラマと称されるが、誰がこんな展開を予想し得ただろう。中継ぎ陣がバトンをつなぎ、勝利まであとアウト2つに迫った九回。守護神・久保が痛恨の同点被弾。手中にしかけた白星が霧散した。
「現状では精一杯の継投。追いつかれてから、よく踏ん張った」。和田監督は厳しい視線を崩さず、追いつかれても、追い越されなかった事実をプラスに受け止めた。だが…。高い確率で勝てた試合だった。
「取れるところでもう1点取っておかないと、こういうことになるということ」。虎将の怒り、嘆き、悲しみ。すべての感情を含んだフレーズ。勝ちに向かうまでの道中で、敵の戦意を確実に奪い去ることに失敗した代償は大きかった。
六回、1死一塁。右前にポトリと落ちた日高の打球。スタートを切る一走・新井良の判断が遅れた。加速を強め、果敢に三塁を狙ったが憤死。3安打、1四球を集めながら無得点。直後に3失点。頭上を覆う雲がドス黒さを増した。
八回も得点機を消し去った。四球に暴投が重なった1死一、三塁。大和が試みたセーフティースクイズ。三走・柴田が本塁に突入することすらできなかった投前へのミスバント。流れは自然と敵軍に移り変わり、土壇場の同点被弾へとつながっていった。
「今日のゲームでそういうところがクローズアップされるようではいけない」。和田監督の嘆きが響く。取れるところで…。これまで何度も言い続けてきたことが、こんな形で、またしても降りかかってくるとは…。
奪えなかったダメ押し点が形勢を変えた。土俵の外に押し出し損ねた敵にスキを与えた。強者であり続けるためには、勝てる試合は確実にモノにしなければならない。失敗は生かすためにある。本物の強さを身につけるための試練だ。