マートン逆転サヨナラ弾!神懸かり奪首
「交流戦、阪神4-3ロッテ」(9日、甲子園)
まさに神懸かってきた。2‐3の九回無死一塁。阪神のマット・マートン外野手(31)が左翼席へ逆転サヨナラ2ランをぶち込んだ。3日前にサヨナラ弾を放ったばかりの助っ人がミラクルの再現だ。チームは週3度のサヨナラ勝ち。そして4連勝。巨人と入れ替わり、7日ぶりに再び首位に立った。
これはデジャビュ(既視感)?いや、紛れもない現実だ。マートンが、長きにわたる猛虎の歴史を塗り替えるサヨナラ弾。まるで3日前のリプレーを見ているような劇的な幕切れ。神業としか言いようのない一撃で、首位浮上に導いた。
「サヨナラに慣れるなんてことはないよ。いつも特別な気分になる」。ヒーローは、穏やかな笑みで喜びを語った。
場面は1点を追う九回無死一塁。守護神・益田が投じたスライダーを捉えた。左翼席を黒く染め、勝利を確信していたロッテサポーター。その渦の中に、白球は鮮やかな軌跡を描いて飛び込んでいった。
6日の西武戦(甲子園)に続く、自身2本目のサヨナラ本塁打。月間2本のサヨナラ弾は球団史上初の快挙。偉大な先人が築いた伝統の1ページに、その名を刻んだ。
打ったのは2球目。球種はスライダー。「前回も初球はタイミングが早かった。自分の中で心を落ち着かせて臨んだ」という状況も西武戦と酷似。そして、前回は本塁打直前に破損したバットを、新しいバットに替えた。本人が「ラッキーバット」と呼んだ幸運のアイテムで、この日の劇弾も生み出された。
「こんなことが起こるのは神様のおかげ。こういう経験をすると、強く感じる」。そう思うのも無理はない。それほど、神懸かった勝利。和田監督も「(終盤は)走者を置いて1本が出なかったが、最後はクリーンアップがカタをつけてくれた」と手放しで喜んだ。
1つの神話も守った。藤浪が高校時代から続ける甲子園不敗神話だ。そのデータを伝えられると「甲子園で2度優勝しているし、プロに入っても負けていないからね」と『甲子園の申し子』に最敬礼。そして、昨夏の記憶に思いをはせた。
甲子園大会での勇姿を見ていたマートンは、藤浪を「ミニダルビッシュ」と呼んだ。「小さくはないけどね。若いダルビッシュという意味で」。今やメジャーを席巻する剛腕エースに、その姿を重ね合わせていた。
数カ月後、チームメートとなった右腕を4番として支える縁。「本当に素晴らしい投手だと思う」。その才能に最大限の賛辞を贈っていた。
巨人が敗れたため、1週間ぶりに首位へ浮上。それでも「1位はうれしいが、10月が終わった時点で1位にいることが大事。今までやってきたことを、変わらずにやるだけ」と気合を入れ直す。
6日のお立ち台。「モウイッチョ、モウイッチョ、モウイッチョ、オネガイシマス!」と再びの劇勝を誓い、自らの手で成し遂げた。この日は、チームが次に甲子園へ戻る28日までの首位維持に「ソウデスネ。ガンバリマス!」と公言だ。有言実行の4番。この約束も必ず果たしてくれるだろう。