能見“恩返し”の快投で7勝目

9回、能見は和田の打球を足に受け降板する(撮影・山口 登)
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 「中日1‐2阪神」(25日、富山)

 傷ついた左脚をひきずりながら帰りのバスに向かい、約束の勝利に明るい表情をのぞかせる。自身の負傷のことはいい。勝ちきれたことに感情が高ぶった。連敗ストップの価値ある白星。期待は裏切らない。チームとして必ず勝つと決めていた。阪神・能見が勝負の舞台でハーラートップタイの7勝目だ。

 「(痛めたのは)スネじゃなくて足首。響くというより今は(冷やして)マヒしてるから」

 完投で締めくくられるかと思われた矢先のことだった。九回1死で和田の打球が、バウンドして左足首付近に直撃。そのまま肩を借りてベンチに下がって降板した。03年の井川以来の4連続完投も目前に迫った中でのアクシデントだったが、そこまでの力投があったからこその勝利だ。

 鋭い直球に、低めの変化球を交えて七回までを5安打無失点。八回に同点に追い付かれたが、続く2死二、三塁でクラークを遊飛に打ち取って切り抜けた。打線の援護があるまで粘って、勝利に導いた97球。和田監督は「ザ・エースやね」とたたえた。ここで示した堂々の姿に意味があった。

 2年前、渡辺長助チーフスコアラーが急逝した富山。今も忘れない。思うように結果が出なかった時、いつも家族のように優しく背中を支えてもらったことを。

 「相手の分析のこと以上に、精神的な部分のことかな。よく声をかけてもらってたからね」

 苦しくても、何とかなると思えた。前を向けた。胸に刻んだ長さんからのお守りがあったから。

 「お前は大丈夫だ」

 その言葉を信じて、ここまで来られた。尽きることのない恩返しの思い。これからもマウンドで積み重ねていく。

次回様子見て アイシングで固めた患部は打撲とみられる状態。次回登板は、一夜明けた26日の状態を見て判断されるもようだ。「(八回の粘りも)勝ったからいいんですよ」。バットでも執念の2安打で7勝目。まさかの代償はあっても、それを上回る感情がある。富山での約束の勝利。価値ある白星が夜空に輝いた。

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