虎競り負けた…拙攻&押し出しが響く
「阪神2‐3巨人」(2日、甲子園)
勝ちきれなかった、しのげなかった。首位攻防第1ラウンド。和田阪神が延長十一回で競り負けた。先手を奪いながら中盤以降に追いつかれ、最後は今季5戦無敗だった延長戦で初めて、黒星を喫した。ゲーム差はこれで3・5。これ以上離されるわけにはいかない。黄金ルーキー・藤浪が初の巨人戦に挑む第2戦こそ、絶対に勝つ。
悔恨の念が脳裏に渦巻く。4時間38分の激闘。総力戦を手中に収めることができず、宿敵の軍門に下った首位攻防第1ラウンド。3タテで首位奪取を狙った戦前の理想図はもろくも砕け散った。聖地に宿る空虚感。タテジマの戦闘服が悲しくなびいた。
「2点目を取った後がね。ランナーを進められなかった。送れなかった。送って打てないなら仕方ないけど…。流れを止めてしまったね」。和田監督が唇をかんで悔しがった。2点目を奪ったイニングで、逆に敵軍が息を吹き返したシーン。
敵失も絡んだ三回、無死一、三塁から、新井が左前適時打を放ったなお一、二塁の好機。今成の送りバントが三塁封殺となった。直前、和田監督はベンチを出て、ネクストに控える新井良の元に赴き、指示を与えていた。だが…。1死二、三塁の加点機を整えられず、新井良、藤井彰が連続三振。風向きが変わった。
菅野攻略はシナリオ通りに進んでいた。鳥谷、大和、西岡。スコアラー陣が収集、解析したデータに基づいて、足技を多用した。3盗塁で何度も足元をグラつかせた。だが、決定打を欠いた。14残塁。完全攻略は未遂に終わった。
最後に誤算が待っていた。同点の延長十一回、2死一、三塁。坂本を歩かせて満塁策を取った。確率論で次打者・立岡との勝負を選択した。しかし、6番手・渡辺が1ストライクからの4連続ボールで痛恨の押し出し。重すぎる1点がスコアボードに刻まれた。
「ああいうところで(マウンドに)上がるピッチャーが苦しいのは百も承知で、ナベ(渡辺)を送り出したんだけど…。ストライクが入らなかったね」。これまで投手陣には何度も助けられてきた。当然、責める気持ちにはなれない。やりきれなさだけが、虎将の胸を駆け抜けた。
ゲーム差は3・5に開いた。ただ、嘆き、悲しんでいる時間はない。再戦が待っている。「長いゲームを落としたけど、ずるずるといくところじゃない。もう1回気持ちを引き締め直してね。明日は大事なゲームになるんで」。8年ぶりの優勝を狙う上での試練。険しい道を踏破してこそ、感激は輝かしい色を放つ。