新井10号琉球弾!2安打4打点で4連勝
「阪神6‐2中日」(9日、沖セル)
阪神が沖縄で初の公式戦に臨み、新井貴浩内野手(36)が10号2ランなど2安打4打点で4連勝の立役者となった。阪神打線は初回に2番・大和から6番・今成まで5者連続安打をマーク。3点を先制してから終始リードを守って中日を圧倒し、南国の虎党を歓喜させた。
逆風をものともしなかった。主砲の意地と力を見せつけるように、完ぺきな弾道は左翼席へ飛び込んでいった。苦しい展開にケリをつけた価値ある一撃。今年、復活への階段を歩み出した沖縄での歴史的1勝に、ヒーローインタビューを受ける新井の表情が自然とゆるんだ。
場面は2点リードの六回だった。無死一塁で迎えた第3打席。フルカウントからの6球目、「反応できた」と内角低めに切れ込んでくる120キロのスライダーを豪快にすくいあげた。快音を残した打球は、左翼から右翼へ吹き付ける逆風をものともせずにスタンドに飛び込んだ。
「次の1点をどちらが取るかが大事だと思っていた」と新井は冷静に振り返った。初回に2番・大和から6番・今成まで怒とうの5連打で先制。以降は追加点が奪えなかった。それだけに和田監督も10号2ランを「大きかった。流れが向こうに行きかけてたところだったから」と絶賛した。
初回はマートンの左前適時打で先制し、なおも1死一、二塁から、右中間フェンス最上部に直撃する2点二塁打を放った。4連勝の立役者は間違いなく、今季最多タイの4打点と復活を遂げた新井のバットだ。
そんな主砲の原点‐。「振り込むことで状態を上げる。昔からそう。(元広島コーチの)大下(剛史)さんに体の大きい選手は振り込んで、走り込まないといけないと教えられたからね」と明かしたことがあった。
右肩を痛めた昨季、バットを振ることすらままならなかった。貫きたかった自らのスタイルを、体が拒否した。「去年は肩のこともあって、まったく振り込めなかった」。進退をかけた契約最終年のシーズン。2月の宜野座キャンプから水谷チーフ打撃コーチと徹底的にバットを振り込んだ。
背中のハリがあっても、名伯楽から「おーい、やるぞ」と言われれば一心不乱にバットを振った。そのスイング数は若手が振り込む量をはるかに凌駕(りょうが)していた。先週、不振からの脱却を図るために取った行動も室内での打ち込み。バットを振ることで、不器用と評される男は自らの道を切り開いてきた。
2ケタ本塁打にも本人は「まだまだ打ちたい」と力を込める。この日、来季の補強策で居場所を脅かす助っ人獲得の情報が一部で報道されても、「全然、意識しない!」と豪快に笑い飛ばしていた。振り込んで、振り込んで、培った自信と実力‐。そう簡単には揺らがない。