今成から六回イッキ7点!逆転V打や
「阪神8‐4DeNA」(14日、甲子園)
重い、重い扉を一振りでこじあけた。聖地にたまったフラストレーションも一気にはじけ飛んだ。大歓声が、ガッツポーズを繰り返す阪神・今成にそそがれる。こん身の力で放った逆転タイムリー。何度も何度も試練を乗り越えてきた男に、勝負の神様が微笑んだ。
場面は1点を追う六回だった。1死満塁で迎えた第3打席。「何としてでも点を取りたかった」と三浦が投じた初球、カウントを取りに来た130キロの変化球を見逃さなかった。こん身のフルスイングで捉えた打球は、前進守備の二遊間を痛烈に破っていった。
チーム22イニングぶりの得点。その瞬間、割れんばかりの大歓声に包まれ、一塁ベースを回ったところでド派手なガッツポーズを繰り返した。三塁に到達したところで代走に俊介を送られたが、ベンチへ退く際にも割れんばかりの拍手がスタンドから送られた。
「絶対に打ってやろうと思って打席に立った。打てて良かったです」。意地もあった。6連勝中は19打数12安打と奮闘しながら、相手が左投手ということで先発を外された。普通の若手なら勢いを失ってもおかしくない状況。それでも「それは自分の力が足りない」と真摯(しんし)に受け止めた。
今年1月も同じ。自主トレ中にキャンプ2軍スタートを通告された。それだけでなく、野手転向の可能性も同時に伝えられた。昨季途中に加入しながら60試合に出場し、何度もマスクをかぶった。投手の特徴を熟知すれば捕手として経験を積んでいける自負もあった。
「捕手で勝負したいんです」。関係者にこう打ち明け、ショックを隠さなかった。そのまま腐ってもおかしくなかったが、前を向いた。「出る限りはそのポジションで頑張る」。どんな状況でも前を向く“強さ”が、今成にはある。
先発出場したゲームは、これで8試合連続安打。存在感は日に日に増している。挫折を乗り越え、居場所をつかんだ男‐。勝負どころで初球を打った逆転タイムリーは、決して偶然ではない。