西岡1000安打も…「コメントない」
「阪神3‐8巨人」(16日、甲子園)
個人の記録など、チームが勝利する喜びとは比べものにならない。阪神・西岡剛とは、そういう男だ。それだけに、悔しさだけが全身に染み渡った。
「コメントのしようがないです。選手は勝つために、一生懸命やっていますから…」
いつもは敗戦の時にも、丁寧に取材に応じる背番号「7」が、その短い言葉だけを残してクラブハウスへと消えた。宿敵・巨人に連敗。勝利を目指すために全力で戦う西岡に、その現実が厳しくのしかかっていた。
初回。巨人先発・菅野を攻略する見事な速攻を見せた。起点となったのは西岡だ。先頭で初球のスライダーを中前へはじき返す。そこから攻撃がつながり、2死二、三塁から新井の左前2点打、続く今成の右中間適時二塁打で計3点を奪った。
「とにかく明日、やり返さないといけない」。前夜の敗戦後、そう話していた。エース・能見が初回に3失点で敗北した初戦の借りを、キッチリと返した形となった。
そして二回だ。2死からの第2打席でも中前打を放ち、日本での通算1000安打を達成した。猛虎の進撃をけん引するリードオフマンが、新たに得た勲章。だが、終盤に大逆転を許しての敗戦に、喜びなどみじんも感じられるはずがない。
この一戦に懸けていた‐。プロ入り時の担当スカウトだったロッテ・松本編成統括は言う。「剛は本当に勝負強いし、勝負どころを知っている。大舞台になればなるほど力を発揮するからね」。14日のDeNA戦では、左膝に自打球を受けて途中交代。だが、必死の治療を施し「伝統の一戦」のグラウンドに立った。
わずか2日前に、そんなことがあったと思わせないプレーの数々。それも、この巨人戦を大事な戦いと位置づければこそ。発した短い言葉に、そのすべてが込められていた。通算1000安打は通過点。球宴前最後の試合に、勝利へ導く1本を放つ。それこそが西岡剛の求める一打だ。