良太2発6打点!今季3本目Gスラム
「ヤクルト0‐12阪神」(24日、神宮)
プロ野球の後半戦が開幕。阪神が激勝再発進を決めた。主役は自己最多1試合6打点の新井良太内野手(29)だ。まずは初回、9号2ランを放って速攻ビッグイニングを演出。七回には自身今季3本目となる満塁弾を左中間席へたたき込んだ。チームは今季最多タイの貯金14。逆転Vへ、トップギアで走り始めた。
あれ、どこだ…。全力で一塁へ駆け出した良太は、打球を見失っていた。二塁を回っても、駆け足を緩めない。観客席の大歓声とベンチを飛び出した仲間たちが、打球の行方を知らせてくれた。後半戦開幕をど派手に彩る10号満塁アーチ。どん底を味わった開幕4番が兄を、西岡を、鳥谷を押しのけ、主役を張った。
「気持ち良かった。たまたまそういう結果が出ただけだけど、自分でもびっくりしている」
快挙は七回。鳥谷の適時三塁打で2点を加え、なおも2死満塁のチャンスで松井光の初球を左中間席にぶち込んだ。グランドスラムは今季3本目。1シーズンに3度満塁本塁打を記録した猛虎戦士は、ブリーデン、田淵、今岡に次いで4人目。球史に足跡を刻んだ。初回にも、先発八木から9号2ランを左翼にズドン。1試合2発も1試合6打点も自身初。身震いしながら神宮の“お立ち台”に立った。
前半戦、悪夢を見た。「良太らしく。元気出せよ」。グラウンドに立てば、内外からそんな声が届いた。原点に戻れ…。確かに開幕前に誓った。「どんなことがあっても、自分らしく、明るく、元気に」。もちろん、忘れていない。結果が出ない。スタメンから名前が消える。それでも自分では元気を出しているつもり…だった。「逃げ出したくなる日もあった」。鏡代わりのガラスがあれば、場所を選ばずスイング姿を映す日々。そんなとき、良太には心の叫びをぶつける仲間がいた。
敬う先輩を自室に連れ込んだ。今月の広島遠征。廊下ですれ違った鳥谷に声を掛けた。「トリさん、僕の部屋で少し話しませんか」。半ば強引に誘導した。連続試合出場を続ける、チームの顔でもあるキャプテンは、親身になってくれた。
「試合に出る怖さを知ってはじめて、プロ野球選手だと思う。毎日試合が楽しくて、勢いだけで出ているうちは、プロ野球選手じゃない。良太は、ここからが勝負だよ」
バットを振れば併殺…。24打席ヒットが出なかった7月。寝苦しい熱帯夜に、ようやく眠りにつけば、悪夢で目が覚めた。眠れぬ夜も、そんな鳥谷の声が支えになった。
前夜、都内で開催された決起集会で桧山、関本が「打倒巨人で頑張ろう」と号令をかけた。再出発の夜、良太が真っ黄に染まった客席に誓った。「全身全霊をかけて優勝を目指します」。大切な仲間と共に、8年間待たせた夢を届ける。