良太、古巣撃ちで決めた自己最多12号弾

 「中日4‐2阪神」(9日、ナゴド)

 表情は険しく、足取りは重い。手に残った感触は敗戦で吹き飛んだ。阪神・新井良が放った自己最多の12号ソロは、逆転勝利を呼び込む一発とはならなかった。

 2点を先制された直後の二回1死。初球だった。大野が外角高めに投じたボール気味の142キロを、引きつけて手元で払うように右方向へ打ち返した。

 高く舞い上がった打球は勢いを失わず、右翼席最前列へ飛び込んだ。昨年記録した自己最多の11本塁打を更新。さらに右方向への本塁打は4月30日の広島戦以来で、復調の兆しと言える、逆方向への力強い弾道だった。

 ただ、節目の一発よりも、敗戦のショックの方がはるかに大きかった。「よかったです」。常に前向きな男でも多くを語ろうとはしなかった。

 06~10年まで5年間在籍した中日では、ナゴヤドームで1本も本塁打を打てていなかった。阪神に移籍して3年目。かつての本拠地で初めて描いたアーチも素直に喜ぶ気にはなれなかった。

 九回1死一塁は岩瀬の内角直球を詰まりながら左前に運んだ。7月24日のヤクルト戦以来で、後半戦2度目のマルチ安打を記録した。自力優勝は消滅したが、まだ戦いは続く。新井良の一打はチームの起爆剤にもなりうる。この日の打撃をきっかけにしたい。

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