マートン連発!一夜で虎の自力V復活や
「DeNA3-9阪神」(21日、横浜)
主砲の一撃で、阪神に自力優勝の可能性が復活した。3‐3で迎えた八回。マット・マートン外野手(31)が左翼席最上段へ特大の勝ち越しソロを放った。この一発を起点に、この回4点。九回には2打席連続弾でダメ押しした。逆転Vへ、あきらめるにはまだ早い。虎戦士、そして虎党の夢を乗せた2発だった。
体全身の感覚、すべてをボールに合わせた。左手の痛みを必死に打ち消し、ただ来たボールを打つ‐。それだけに全神経を注いだ2球目、真ん中高めに浮いてきた変化球をこん身の力で振り抜いた。グングン伸びて左翼席最上部の看板を直撃した白球。それが巨人に再点灯したマジックを1日で打ち消した。
驚弾が飛び出した場面は同点の八回だった。先頭で迎えた第4打席。「考えすぎていたので、自分の勘を信じた」と1ストライクからの2球目を、豪快に左翼席最上段へたたき込んだ。
前夜の大逆転負け、そしてこの日も3点のリードをミス絡みで追いつかれる苦しい展開。そんなジメジメした重い空気を完全に振り払う特大の10号ソロ。4番の一発でチームが息を吹き返し、自身も本来の姿を取り戻すと勢いは止まらない。
続く九回無死一塁で迎えた第5打席。カウント1ボールから再び左翼席中段へアーチをかけた。ダメ押しとなる11号2ランは、来日初の1試合2発となる2打席連続弾。序盤は須田にまったくタイミングが合わず「始動を早くして打てる球を積極的に打つようにした」と試合中に修正したことが功を奏した。だがうずく左手の痛みを消したのは、本人の強い精神力以外に他ならない。
今、マートンの左手には痛々しいほど、テーピングが巻かれている。打撃状態を上向けるために時間を費やした先週の京セラドーム6連戦中に、左手のマメがつぶれた。想像以上の激痛だったことが分かるのは五回の第3打席。ファウルを打った際、いつもは左手で大きくフォロースルーを取る助っ人が、右手でバットを押し込んでいた。
関川打撃コーチが「その影響は多少なりともあったかもしれない」と語るように、序盤3打席は明らかに本来の姿ではなかった。そこから心技ともに修正して放った2打席連発。和田監督も「こういう試合を決めるのが4番。大きな仕事をしてくれた」と賛辞を惜しまない。
前夜、7点リードからの大逆転負け。マートンは「うまく切り替えることができた」と言う。致命的な敗戦から1日で自力優勝の可能性も復活。最後まで報道陣にケガのことを明かさず、笑顔でバスに乗り込んだ4番は強い。簡単に折れるほど、ヤワな4番ではない。