「巨人４‐０阪神」（２７日、東京ド）

　敵地に広がる失意の輪。悲しみの色が左翼席を包む。阪神の逆転優勝に向けて、大きな鍵を握った初戦。猛虎が宿敵の軍門に下った。今季１７度目の完封負け。消えた３タテ。連勝は止まり、詰めたかったゲーム差は逆に６へと広がった。

　攻めの姿勢が裏目に出た。初回、無死一塁。２戦連続で２番に据えた今成への指示は強攻策。手堅く犠打の選択肢を排除した結果は、皮肉にも遊ゴロ併殺。直後に浴びた先制弾。奪いたかったイニシアチブ。対照的なコントラストを描いた。

　タテジマ打線は空回りを重ねた。四回、１死一塁。フルカウントからの６球目を福留が見逃し三振。スタートを切った新井が二塁で憤死。八回にも１死一、三塁から、マートンが遊ゴロ併殺。４度も先頭打者が出塁したが、３併殺が本塁を遠ざけた。

　敗戦が決定した瞬間、和田監督はグラウンドに背を向けた。両手を腰に当て、にらみつけるようにテレビ画面を見た。最終打者・新井良が空振り三振を喫したリプレイ映像。ため息交じりに大きく息を吐き、会見場の天井に視線を泳がせた。

　「終わったことなんでね。ただ、ベンチの選手は相当悔しがってた。まだいけると思う。明日、明後日、なんとか頑張らんと」。口惜しさ、腹立たしさ、無念さ…。すべての感情を押し殺し、虎将は前を向いた。

　またしても、徳俵に立たされた。２８日に勝利しなければ、必死の思いで消した優勝マジックが、宿敵の頭上に再点灯する。敗北はもちろん、引き分けすら許されない一戦。夢と希望を小さくするわけにはいかない。

　熱くなろう‐。心と体を燃え上がらせ、頭は冷静沈着に。悲しみに暮れるタテジマは見たくない。見たいのはグラティのパフォーマンス。連破あるのみ。猛虎の夏を終わらせるな。不屈のチャレンジャー精神で、強敵を打ち砕け。