“奇策”4番・鳥谷、無安打も継続起用

 「阪神0‐3広島」(30日、甲子園)

 希望を託された一打はしかし、ため息と共に力なく転がった。阪神・鳥谷は3点を追った九回2死一塁での第4打席、一ゴロに倒れて無情のゲームセット。過剰な意識はなかったが、期待が高まったのは自然なこと。阪神の第94代4番のバットから、この日は快音が響かなかった。

 「(4番への意識は)別に。急に大きいのが打てるわけではないので。(野村は)コーナーに変化球がきていた」

 試合前、球場でのスタメン発表時に初めてのコールが響く。「4番、ショート、鳥谷」。スタンドがどよめき、拍手と声援が注がれた。自身プロ10年目、1370試合目の出場にして初めてのスタメン4番。ただ、4番の仕事が求められるような打席は、巡ってこなかった。

 自然体で挑んだ中、第1打席は二回の先頭。ここで遊直に倒れると、四回には2死無走者から、投ゴロに打ち取られた。巡ってきた七回の第3打席は、先頭で粘って四球を選んで出塁。しかし九回は一ゴロ。28、29日の巨人戦では2試合連続で安打を記録していたが、この日は無安打。チームも無抵抗のまま敗れた。

 鳥谷に意識はなかったとはいえ、結果的に最高のスタートとはいかなかった「4番デビュー」の一戦。開幕前から、和田監督の頭にあったプランだった。2月のキャンプ中に、鳥谷の4番での起用を問われて「いいこと聞くね」と否定しなかった。1年間試合に出続ける強さと長打力。現時点での実力はもちろん、さらなる成長を促す思いも込められた起用だった。

 31日も4番で起用される。4連敗の状況に、「明日がんばります」と鳥谷。意識を置くのは、自分よりチームのこと。生え抜きの中心選手で、チームのキャプテン。重責を担い、スタンドのファンから数え切れない夢も背負う。期待されるのは流れを変える働き。答えはバットで示すだけだ。

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