1番・上本復活弾!西岡の代役果たした
「DeNA1‐10阪神」(3日、横浜)
1号復活弾。常人なら、こみ上げるものもあるはずだ。阪神・上本はそんな感情を一切漂わせず、淡々とベースを一周した。
「ケガしたことを思い出すとか、そういうことはなかった。次の打席、守備があるので、切り替えて…と思っていた」
3‐0の四回。今成、新井良の連続安打で塁上を埋めたが、後続の清水、白仁田が送りバント失敗。そんなミスを帳消しにする白球が、左翼スタンドまで伸びた。和田監督が「本当に大きかった」と称賛する効果抜群の一発で、リードを6点に広げた。
上本の復帰5試合目。待望の軌道まで、道のりは長かった。2月26日のWBC強化試合、侍ジャパン戦で巨人坂本の飛球を追い、左翼手・伊藤隼と激突した。担架で京セラドームの一塁ベンチ奥に運ばれた上本は、パニック状態だったという。右まぶたが腫れ上がり、左足は軽く地面につくことさえできなかった。
「足首がなくなって、長靴を履いているようだった」。トレーナー陣は当時の惨状を振り返る。搬送先の病院で告げられた診断は前距腓じん帯損傷。キャンプからの実戦で打率・306と結果を残していた。西岡を脅かすべく、快調に調整を続けてきた矢先の事故だった。
3月3日からリハビリを開始。6月初めに2軍の全体練習に合流したが、復活過程は難航した。グラウンドではゴロ捕球もベースランニングも行った。もう、大丈夫か…。自問自答したが、上本は自分のプレースタイルを再確認した。売りは、足。トレーナー陣にわずかな違和感を伝えた。「まだ、小石がはさまったような感じがするんです」。手術に踏み切った。復帰見込みが2カ月以上遅れたが、上本は「100%で戻りたい」。術後は、トレーナー陣から「アイシングしておこう」と勧められても、「いえ、大丈夫です」と弱みを見せず、1軍復帰だけを見据えた。
「元気な姿を見せて、それが恩返しになればいいと思います」。残り28試合。感謝の念を形にしたい。遅れてきた上本の戦いが始まった。