鳥谷、出た4番初弾!痛快G倒大暴れ
「阪神8‐4巨人」(6日、甲子園)
ペナントははるか遠くにしか見えない。それでも、伝統の一戦で猛虎の誇りは健在だ。キャプテンの鳥谷敬内野手(32)が、4番として初の本塁打を放つなど、4安打5打点。打線は13安打8得点と火を噴いた。能見篤史投手(34)も2カ月ぶりの9勝目。最後の意地だ。ここから3連勝で、今季の巨人戦勝ち越しを決めてくれ‐。
いつもそっぽを向く浜風が、ほほえんだ。1点リードの五回。ヒットと敵失で築いたチャンスで4番がほえた。その初球。沢村の浮いた147キロをドンピシャでとらえた白球が高速で右翼席まで達した。四回に高橋由の一発で1点差に迫られていた。追い風にも乗った値千金の7号3ランが宿敵にダメージを与えた。
「引っ張る意識で打席に入った。一、二塁間へ打って、走者を進めようと思って…。最悪、ゲッツー崩れでもチャンスは続くんでね」。4番着任後の初アーチ。重責に指名した和田監督にとっても待望の一発だったが、鳥谷本人の意識はスタンドではなかった。初回は流し打って左二塁打。三回は力強い右前打で追加点。六回にも安打を重ね、4安打5打点。これ以上ない4番の働きを超満員の虎党に披露し、前夜DeNAに屈した0‐1、サヨナラ敗戦の憂さを晴らした。
「4番、どうこうはないですよ。4番で回るのは最初の打席だけ。あとの回は、どの打席でも、ランナーがいればかえす。それは一緒だから」。試合後は、表情を崩さなかった。お立ち台でインタビュアーから景気のいい言葉を振られても、鳥谷のスタイルは不変だ。
闘志を派手に表さない。クール…。プロ10年間でそんなイメージが定着したが、内面はリーダーにふさわしい。和田監督が就任と同時に指名した「主将」の肩書はグラウンド外でも発揮されている。
真夏の事件後だった。8月14日の広島戦(京セラドーム)で、マートンがストライク判定に激高し、退場処分を受けた。審判員に対する侮辱行為、そして感情のコントロールを誤った行動として非難も浴びた。そんなとき、真っ先に助っ人の孤独感を癒やした男が、鳥谷だった。「皆、気持ちは分かっているから」。マートンはチームリーダーに救われた。背番号1が精神的支柱として、伝統球団を背負っている。
八回。鳥谷が三振に倒れると、マンモススタンドがため息に包まれた。サイクル安打、そして5本目の快音を待っていた虎党が贈った、最大級の賛辞だった。
「負けられない試合なので。明日、あさっても勝てるように頑張ります」。前回敵地で食らった3連敗の屈辱は、3連勝でしか晴らせない。鳥谷の意地が、巨人の独走に待ったをかける。