魂の一撃!桧山に捧げるマートン弾
「阪神1-4巨人」(7日、甲子園)
魂のこもった一撃だった。二回、阪神のマット・マートン外野手(31)が右翼ポール際へ15号先制ソロを放った。この日、引退を表明した桧山に捧げる一発だったが…。しかし、先発の藤浪が逆転を許し、打線も追加点を奪えず完敗。勝利で飾ることができなかった。
主導権を握ったかに思われた。マートンの一発が流れを呼び込んだかに見えた。全員で誓い合ったベテラン・桧山への恩返し。いつものシートノック直後ではなく、試合開始直前に選手が円陣を組み、一つにした気持ち‐。だからこそ敗戦が何よりももどかしい。
試合後、助っ人の表情が晴れることはなかった。二回1死走者なしで迎えた第1打席。フルカウントから外角140キロ直球を右方向へはじき返すと、いつもの浜風が消えていた。
そのまま右翼ポール際に飛び込み「何が来るか分からなかったので振りすぎないことを意識した」。チームトップタイとなる15号ソロで奪った先制点。だが宿敵に2本の2ランで反撃されると、ひっくり返す力はなかった。マートン自身も六回の第3打席、九回の第4打席と連続して併殺打に倒れた。
逆転勝利は8月24日の中日戦以降、12試合も遠ざかっている和田阪神。試合前には桧山が現役引退を発表し、勝負強い打撃で何度もゲームを決めてきた男が今季限りでチームを去ることが決まった。マートンも「もちろん彼の経験もすごいけど、野球に取り組む姿勢、キャンプに入ってきたときにしっかりトレーニングをしていた」と影響を受けた1人だ。
昨季までの主戦場は右翼。試合前のシートノック、代打稼業であるにもかかわらず桧山の姿がそこにあった。芝生の上で一緒に打球を追い、懸命に走る姿を目の当たりにしてきた。「44歳になっても試合前の準備をしっかりやっている。しっかり走って、体を鍛えている姿を4年間、見ていたので敬意を持っています」。アメリカでは見られなかった姿に、助っ人は大きな感銘を受けていた。
それは他の選手も同じ。節目の日だからこそ勝利をプレゼントしたかった。シーズンも残り24試合。ベテランを最高の形で送り出すために、一つでも多くの白星がほしい。