西岡復調!移籍後初の2戦連続猛打賞
「ヤクルト2‐3阪神」(13日、神宮)
勝った。虎がやっと、連敗を止めた。勝利の立役者は、移籍後初となる2試合連続猛打賞をマークした西岡剛内野手(29)だ。初回に中前打、五回に右越え三塁打を放ち、七回には左線二塁打で新井の決勝犠飛を引き出した。投手陣も、シーズン55本塁打の日本記録更新に注目が集まったヤクルト・バレンティンを見事に封じた。残り19試合。和田阪神が最後の意地をみせる。
西岡の表情は疲れ切っていた。背中からは明らかに疲労の色がにじんでいた。約4時間、チームが勝つために頭を動かし、打って、走り回ったリードオフマン。移籍初となる2試合連続猛打賞。4連敗の泥沼からチームを浮上させたのは間違いなく、西岡だ。
価値ある安打は2度、同点に追いつかれた直後だった。五回1死から右越え三塁打で出塁すると、鳥谷の右前適時打で勝ち越しのホーム。七回には、無死一塁から八木のカーブを狙って左翼線へはじき返した。
「カーブでカウントを取ってきてたんで。これを打ったら投げる球がなくなる」と配球を読み、左腕をKOへ追い込む二塁打。これが新井の勝ち越し犠飛を呼んだ。「チャンスメークできて良かった」と言うが、試合を動かしたのはバットだけではない。
初回、中前打で出塁すると新井の打席で2桁到達となる10個目の盗塁を決めた。その直後、今度は三塁へ向かってスタート。相手バッテリーに気づかれ憤死したが「初回だし、思い切って行っていい場面。アウトになったのは反省しないといけないですけど」。4連敗の重苦しいムードを振り払うためだった。
苦しいとき、流れが向かないとき‐。西岡はあえて危険を伴うギャンブルプレーを選択する。当然、失敗すれば批判にさらされる。ファンの厳しい視線もある。それでも「好走塁と失敗は紙一重なんですよ」と西岡の野球理論は揺るがない。
ロッテ時代に初めて出場した05年の日本シリーズ。当時、21歳の西岡は「阪神は目に見えない“何か”と闘っているように見えた」と明かしたことがあった。移籍してきてからも失敗を恐れ、批判を避けるようにプレーする若手たちは萎縮しているようにも映った。
昨季、大型連敗を繰り返して5位に沈んだチームに、1プレーで流れを変える選手がいなかった。批判されてもいい。厳しい視線もかまわない。勝つために‐。懸命に空気を変えようとする西岡がいるからこそ、10もの貯金を積み上げてきた。
和田監督は「ここからでも遅くない。状態を上げていかないと」とチーム全体を鼓舞した。「勝って良かった。明日も勝つことが大事」と声を振り絞った背番号7。苦しい局面に立たされてこそ、この男はより真価を発揮する。