マートンは止まらん!今季16度目猛打賞
「広島3‐1阪神」(19日、マツダ)
前夜18日に4安打の阪神・マートンが、この日は3本安打を重ねた。猛打賞は今季16度目。もどかしいのは、その快音が一度も得点につながらなかったこと。「残念ながら、負けてしまった。きょうはそれだけだよ」。試合後、ヒットメーカーの表情に疲労感が漂った。無理してつくろう笑顔も痛々しい。
坂の先制本塁打で勢いづいた初回。先発バリントンの立ち上がりに、たたみかけるように左中間二塁打を放った。後続が倒れ追加点を奪えなかったが、好調なバットは湿りを知らない。三回にも中越え二塁打で、前試合から6打席連続安打。八回には中前打を放った。中秋の名月に虎は笑えなかったが、マートンのバットコントロールは、こうこうと輝いた。
カード初戦を無安打で終え、打率はジャスト3割まで低下した。それでも、残り2戦で9打数7安打。息を吹き返す固め打ちで上昇曲線を描いた。結果のみが評価につながる世界に身を置きながら、「無安打」をポジティブにとらえる日もある。完璧なスイング、真芯でとらえた打球が野手の正面をつく。「ハードラック!」とため息をつくが、内容さえ伴えば、Hランプがともらなくとも上を向く。そんな精神が安打量産の秘けつでもあるという。
甲子園のクラブハウスではスコアラー室に閉じこもり、大型の液晶テレビを穴が空くほど凝視する。“格闘”の相手は、過去のヒット集と相手投手の画像…。リモコンの再生&一時停止ボタンの表示が擦り切れんばかり、親指が動く。この日課が打撃の「波」を最小限に抑えている。
CSファーストSまで3週間あまり。水谷チーフ打撃コーチは「あれは、ええわな」と打撃陣で唯一、背番号9をたたえた。阪神は短期決戦に勝てない。そんな歴史を今年こそ、ぬぐいたい。3冠王を狙う“あの”バレンティンが唯一追いつけそうにないのが、最多安打部門。156安打の3番打者を抜きに、CSの勝算を語ることはできない。