桧山、お立ち台でプレ引退スピーチ
「阪神8-4中日」(1日、甲子園)
神様が決めた。阪神が、代打・桧山進次郎外野手(44)の右線適時二塁打などで8得点。連敗を4で止めた。今季限りで現役を引退する背番号24は、今季初の本拠地お立ち台に上がり、虎党から大歓声を浴びた。これで3年ぶりの70勝到達。シーズンの勝率5割以上も確定した。2日は3位・広島との直接対決。この勢いで一気にシーズン2位を決める。
プレ引退スピーチだった。桧山が甲子園ラストのお立ち台に呼ばれた。観客席から大歓声で祝福されると、「ありがとう…ございます」。やや、うわずった声で感謝した。「正直、今年はないんじゃないかなと思っていた。本来ならトリとか剛とか、中継ぎ陣がお立ち台のはずだけど、チームのはからいで上がらせてもらった」。インタビューを終えると、ナイン全員に迎えられ、両手を外野にかざす歓喜のポースに、笑顔で交じった。
謙遜する一撃ではなかった。2点リードで迎えた六回。新井良の死球、藤井彰の犠打で1死二塁。追加点の好機が広がり、代打のコールを受けた。空席を感じさせないボルテージが「神様」を迎えた。
初球の変化球を見送り、1ストライクから2球目の速球を右翼線に運んだ。「内角の決して甘いボールではなかった。うまくひじをたたんで打てた」。自画自賛の二塁打でリードを3点に拡大。今季甲子園で5本目の安打で代打通算打点を「111」まで伸ばした。
代打の神様と呼ばれてからも、ずっと「外野手」だった。今春の交流戦。埼玉、千葉遠征を終え甲子園に帰った5月終盤に、天然芝の異変に気づいた。5月26日の日本ハム戦で藤浪が大谷に二塁打を浴びた、その弾道をベンチから違う視点で眺めた。「今年は芝が硬くないか」。右中間を転がる打球の速さに敏感に反応した。
グラウンドを管理する阪神園芸の統括者に「例年と比べてどう?」と尋ねた。今春から夏にかけ、雨量不足で聖地自慢の天然芝が悲鳴をあげていた。桧山の助言を預かった担当者は芝の改良に着手。本来の姿をとり戻したという。「(こういう変化を)大和が言うようになれたらいい」。進退に決断を下していなかった頃、将来を背負う後継者にそんな願望を抱いていた。
「一番長く試合をできるチャンスが残っている。野球は何が起こるか分からない。最後まで野球ができるように…」
最終回を迎える前、イニング間のキャッチボール役を買って出た。再び、巻き起こる大歓声。5日は引退セレモニーを行うため、レギュラーシーズンのお立ち台はこの夜が最後。10カード連続負け越しの現状をはかれば「日本一」なんて、笑われるかもしれない。それでも見据えるのはCSのまだ先だ。甲子園のお立ち台は、あと何度立ったっていい。