藤浪、痛恨の被弾悔やむ「完全な失投」
「セCSファーストS第1戦、阪神1‐8広島」(12日、甲子園)
阪神・藤浪が珍しく悔しさをあらわにした。悔やんでも悔やみきれない。1‐1、同点の五回だ。2死一、二塁からキラへ投じたカットボールが甘く入った。白球は秋空を切り裂き右翼スタンドへ。4番に痛恨の勝ち越し3ランを浴びた。
「完全な失投です。ど真ん中なので。1番やってはいけないことをしてしまいました」
真っ赤に染まった左翼スタンドが歓喜する中、ルーキーはマウンドで、両手を膝につき、うなだれた。
“鉄のカーテン”で、隠し通されたCSファーストS初戦の先発投手。メッセンジャーでも能見でもなく、藤浪だった。「広島と(先発で)2試合やって相性もいいし、長打も打たれていなかった。いろいろトータルでマエケンに当てた」と中西投手コーチ。地鳴りのような大歓声に迎えられ、初回のマウンドに上がった。
先頭の丸を直球で空振り三振に斬ると、もう、ボルテージは最高潮だ。「ボール自体は悪いとは思わなかった。三回までは何とか修正できた」と序盤はスコアボードに、ゼロを刻んだ。
四回には無死一、二塁から松山に一、二塁間を破られ先制点を許した。なおも、一、三塁とピンチは続いたが、後続を断ち、踏ん張った。広島の先発・前田健相手に、投げ合いも演じた。
高卒新人で初のCS初戦のマウンドは、5回7安打4失点。高校時代に鳴らした大舞台での勝負強さを発揮できず、敗戦の責任を背負い込んだ。
「情けないピッチングをしてしまいました。プレッシャー?それは関係ないです。いつも通り投げました」
藤浪はベンチに身を乗り出し、ゲームセットまで逆転勝利を信じた。だが、リベンジの機会が訪れる可能性はまだ残されている。「次の登板があると信じて、調整するだけです」。この悔しさをバネに超一流投手への、階段を駆け上がる。