阪神・掛布氏 伝説の“荒川道場”再現
熱血道場が幕を開ける。阪神・掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(58)が、11月1日から始まる秋季キャンプで、ホテルの自室に畳を張り、マンツーマンの打撃指導に乗り出す。猛虎打線再建、現有戦力の底上げに向け、ミスタータイガースが昼夜を問わず、心血を注ぐ。
密室を切り裂くスイング音。激しい息遣い、額から滴り落ちる汗。はだしで畳を踏み締め無心で素振りを繰り返す。一切の妥協を許さないマンツーマン指導。掛布道場の開講だ。
11月2日から、秋季キャンプへの合流を予定している掛布GM付育成&打撃コーディネーター。夜間練習とは別に、ホテルの自室に選手を招き、打撃指導するプランを温めており、球団には素振り用に畳1枚を用意してもらう腹積もりだ。
現役時代、掛布氏は素振りへの強いこだわりを持っていた。遠征先の試合後、食事を終えてホテルに戻ると、決まってバットを振り続けた。イメージを描き、ライバルを打ち砕く形作りに余念がなかった。
「全体での夜間練習とは別に、個室で選手と2人きりの時間を持ちたい。その空気感を大切にしたい」と掛布氏。複数相手でなく、1人だけを見る。はだしになって畳の上で素振りを繰り返すことは、足の裏で地面をつかむ感覚を養うことに効果があるとされる。
荒川道場の再現だ。通算868本塁打の世界記録を樹立した王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)に一本足打法を教え込んだ荒川博氏。若き日の王を自宅に呼び、畳がすり切れるほどバットを振らせ、本塁打キングの礎を築いた。
掛布氏の要望を伝え聞いた球団幹部は即座に快諾した。「いい話だね。なんの問題もないでしょ。畳を用意することぐらいお安いご用。荒川道場だね」と和製大砲の出現に期待を寄せた。
グラウンド上での指導に始まり、夜間練習、自室での個別指導。寝る時間を削ってでも、殻を破るキッカケをつかんで欲しい。それが掛布氏の切なる願い。9年ぶりのリーグ優勝に向け、ミスタータイガースが動く。