掛布鬼軍曹、新ミスター虎の育成誓った
「阪神秋季キャンプ」(2日、安芸)
今オフから指導者として25年ぶりに現場復帰した掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(58)が2日、高知県安芸市で行われている秋季キャンプで指導を開始した。練習開始前のあいさつでは若虎に厳しい言葉をかけ、シートノック中には怒声を飛ばすなど“鬼軍曹”の一面も。喜怒哀楽を前面に出し、ミスタータイガースの後継者育成を誓った。
掛布コーディネーターの怒声が響き渡った。「おいっ!!」。その矛先はシートノックで送球がそれた伊藤隼に向けられた。客席の空気、グラウンドの雰囲気が一瞬で張り詰める存在感。上はウインドブレーカーで下はユニホーム。25年ぶりの縦じま姿は、優しそうな第一印象と明らかに違っていた。
その後も首脳陣の誰より声を張り上げた。指導者の大半が一塁ベンチ前で見守る中、自身は新井良、今成が守る三塁後方に陣取り、つぶさに目を配ってゲキを飛ばした。ノッカーの高代内野守備走塁コーチがミスヒットすれば「ノッカーが悪い!」と大声で指摘。掛布コーディネーターに負けじと選手たちも声を張り上げ、安芸のグラウンドは一体感に包まれた。
現役時代、ミスタータイガースの称号を受けた事実にたがわぬ存在感。練習開始前のあいさつでは「監督が言ったように、1年間、戦う体力がないのは君たちのことだ。このキャンプでどれだけ自分を追い込めるか。追い込むには野球に対する甘えをなくす。野球に対して言い訳をしない。伝統あるタイガースのプライドを持って臨んでほしい」と熱く語りかけた。
打撃回りでは野手全員に声をかけるなど約7時間、グラウンドで喜怒哀楽を前面に出し「結構、1日いると足が張るもんだなと。太りすぎかな?」と充実の表情を浮かべた。
親子ほど年が離れた選手への初指導。だからこそ「私の方からカベを壊していかないと。元気を出していろんなちょっかいを出して」‐。今成には「お父さん(日本ハム・今成スカウト)に言うぞ!」と笑いながら声をかけ、ファンへ「新井良太、変身!」とアピールする場面もあった。
現場復帰したミスタータイガースの思いは一つ。「ここにいる全員にミスターと呼ばれる可能性がある。その手助けができるように」と後継者の育成だ。最後に「明日は休みます。掛布、リタイア1号!」と言い残して球場を離れたその背中からは、指導できる、グラウンドに立てる“喜び”がにじんでいた。