梅野惜っし~あと50センチ特大三塁打

 「オープン戦、阪神2-3巨人」(9日、甲子園)

 三振なんか恐れていなかった。結果が出ようが出まいが、関係なかった。阪神ドラフト4位・梅野(福岡大)の意識はただ一点、こん身の力でバットを振り抜くことだけ‐。高々と舞い上がった打球は強烈な浜風に乗って伸びていく。あと50センチで左翼フェンスに阻まれたが、度肝を抜く一打に聖地が大きく沸き返った。

 「振ることに関しては中途半端にしたくなかったんで」と振り返った場面は2点を追う八回だ。無死一塁から代打で登場し、土田のスライダーに対応できず1ボール2ストライクと追い込まれた。並のルーキーならここで小さくなっても不思議ではないが…この男は違った。4球目、134キロのツーシームを豪快なフルスイングでたたき上げた。

 打球はぐんぐん伸びて左翼フェンスを直撃する適時三塁打。あと50センチ届かなかったことに「もうちょっとパワーがほしいっスね」と悔やんだが、度肝を抜くオープン戦初打点。和田監督が「思い切りの良さが出た。代打で行ってもああいう打撃ができる」と評したように、1軍レベルの選手でも代打で追い込まれた状況になれば、少なからず萎縮する。

 まさに怖いモノ知らずのフルスイング‐。新人離れしたスイング力の秘けつは大学時代から愛用するバットにある。ソフトバンクなどで活躍したオーティズと同タイプの代物で、メーカー担当者は「日本人で扱う選手は少ない」と言う。

 とにかく飛ばすために作られた助っ人仕様のバットをいかんなく振り回す小柄なルーキー。「代打でチャンスをもらっても思うようにならなかったので、何かしらの形で打てればと思っていた」と納得の表情を浮かべた。どんなに厳しい状況でも貫けるフルスイング‐。その姿には確かに、“大物感”が漂っている。

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