ゴメス真の4番や 甲子園初弾&猛打賞
「阪神7‐5ヤクルト」(19日、甲子園)
今季最大5点差の大逆転で阪神が甲子園7連勝。巨人が敗れて2位に浮上した。マウロ・ゴメス内野手(29)が2点を追う五回に聖地初弾となる同点2号2ランなど3安打3打点で、今季2度目の猛打賞。開幕から20試合連続出塁とし、阪神の来日1年目の外国人選手として最長記録となる89年フィルダーの21試合に王手をかけた。
バレンティンが即座に追うのをあきらめた。見せかけの捕球姿勢ができる唯一の抵抗だった。そのはるか頭上を越え、甲子園の左翼席中段に打球が突き刺さった。ゴメスはその力を誇示するように、大歓声を楽しむように、ゆっくりとダイヤモンドを回った。
「格別な思いがある」と打ち明けた甲子園1号。しかも価値ある同点2ランにファンも拍手と大歓声を惜しまなかった。壮観に映った4番を迎えるスタンディングオベーション。その時は、2点を追う五回に訪れた。
1死一塁で迎えた第3打席。直前にカウント2ボールから左翼ポール際へあと少しで本塁打という大飛球を放っていた。「あのファウルは意識せず、打てる球を打とう」。続く4球目、外角低めに落ちるシンカーを無意識に、そして完璧に振り抜いた。
試合を振り出しに戻す2号アーチ。第1打席で右前打を放ち、三回2死二塁の第2打席では、追い込まれながらも中前へタイムリーを放った。ややオープンスタンスにフォームを修正し、今季2度目の3安打猛打賞、3打点の大暴れ。今季最大5点のビハインドをひっくり返した立役者は間違いなくゴメスだ。
完全に周囲から認められた虎の新4番。本人の目も次なるステージへと向いている。日々、マートンと一緒にウエート場へ足を運ぶ。“先輩”から長いシーズンを戦う秘けつを教えられ、練習前に筋力維持を目的にトレーニングを積んでいる。
球団関係者は「アメリカの時はやってなかったみたい。そこらへんをマートンが教えてくれている」。来日1年目の助っ人は、日本独特の蒸し暑い夏場に調子を崩しやすい。蓄積疲労も少ない春先にしっかり“体の貯金”をつくれるか‐。フルシーズンで結果を残すため、事前の準備を怠らない。
初体験のお立ち台に「活躍しないとああいうことができないので」と快感に浸ったゴメス。「オオキニ!!」と言い残して家路に就いた男の力を、もはや疑う余地はない。