鳥谷 反撃告げたキャプテンの1打
「阪神8‐7ヤクルト」(20日、甲子園)
劣勢を、いとも簡単にはね返す。それを可能とする力強さ、そして粘りが猛虎打線には存在する。連日の逆転に歓喜する聖地。ドラマの始まりは、阪神のキャプテン・鳥谷の一打から始まった。
いきなり2点のビハインドを背負った初回の攻撃。だが1死二塁で鳥谷が打席へ向かうと、何かを確信した虎党から大声援がわき起こる。その期待に応え、木谷が投じた内角のフォークを中前へはじき返し、二走・上本を迎え入れる適時打を放った。
「良かったです。(打球が)飛んでいるコースもいい」と謙虚に話す鳥谷。一時は1割台にまで落ち込んでいた打率も、最近10試合で34打数17安打と打ちまくり、・342まで急上昇した。
和田監督も「鳥谷がタイムリーでかえしてくれた。そこが大きかった」と称賛する反撃の一打。ただ、鳥谷が存在感を示すのはヒットだけではない。
2点を追う五回1死一、二塁では四球を選び好機を拡大すると、ゴメスの左中間二塁打で逆転のホームを駆け抜けた。六回2死一塁では四球を選び、再びゴメスの左翼線二塁打で本塁生還。打線爆発の陰で、鳥谷の「つなぎ」が光った。
ここまでの道のりは決して平たんではなかった。オープン戦終盤に背中の張りを訴え離脱し、開幕後も不調に陥る。その中で打撃練習ではこれまでの右足を大きく上げるフォームと、すり足に近いタイミングを取るフォームを試し、投手によって使い分ける形で復調への試行錯誤を続けてきた。
ひたむきな姿が暗闇を打ち消し、鳥谷の打撃にまばゆい輝きを与えた。だが、個人の数字に満足する男ではない。「これを続けていけるようにしたい」。目指すはチームの勝利、頂点のみ。その瞬間まで、背番号1は勝利へつなぐ一打を追い求める。