新井の逆襲!代打V打で虎4連勝
「中日4-10阪神」(22日、ナゴド)
決めた。4‐4の八回1死満塁、代打で登場した阪神・新井貴浩内野手(37)が左前に殊勲の勝ち越し打を放った。ここまで代打中心の起用が続いている元4番が、意地の一打でチームを今季2度目の4連勝、今季最多の貯金6に導いた。頼れる男は、開幕から22試合連続出塁を記録したゴメスだけじゃない。
新井がたった1球で試合を決めた。同点の八回。1死満塁で代打のコールを受けた。その初球、制球の定まらない田島の浮いた直球を迷わずたたき、三遊間を破った。値千金の「1」が電光掲示板に刻まれる。藤浪が喫した七回の失点をかき消し、大歓声を浴びた。
「今までと違って今年は反応できるから。どんどん振っていこうと。それしか考えてなかった」。追い込まれるまでに勝負をつける。これが、新しい新井の攻撃スタイルだ。
「お前、何型だ?」。この問い掛けからすべては始まった。今春の沖縄キャンプ。評論家として宜野座を訪れていた広島時代の同僚、前田智徳氏と打撃論を交わした。「何型?血液型のことじゃないよな…」。現役時代、親密な付き合いのなかった前田氏が穏やかな口調で語り始めた。
「新井は足の内側とつま先に重心があるタイプだな。このタイプは軸足に体重を残すことを意識し過ぎないほうが、うまくいくんよ。前に突っ込むことを恐れんでええから」。
スイング時に上体が前のめりになる。泳がされるフォームを「前向き」にとらえることは、新井の教科書にはなかった。「問題は突っ込み方なんよ。頭の位置を垂れずに、平行に突っ込めば、拾えるボールもある」。人それぞれ体のつくりが異なるように、スイング時に重心の位置も千差万別。それを区別すれば新井は「A‐1型になる」と前田氏は言った。
広島時代、5番前田とクリーンアップを組んだ。ネクストサークルで4番新井の打撃を観察していた前田氏から諭された。「あのころは、いい感じで突っ込んでいたぞ」。当時のDVDとにらめっこしながら、開幕までの時間を過ごした。
追い込んでから、外に沈む変化球…他球団が新井を料理するレシピがこれだった。泳ぐことを恐れ、体重を軸足に残そうと意識するあまり腰が引けたようなスイングに終始する。旧スタイルに別れを告げよう。一大決心で3月を過ごした。開幕までの全実戦打率・472。成果が表れた。
敵地のお立ち台。持ち場は代打だが?そう問われると、言葉をのみ込んだ。「与えられた場所で頑張ります」。試合に出たい…。葛藤の先に出口があると信じて、再び来るべき出番に備える。