福留200号千金弾で聖地9連勝
「阪神1‐0広島」(29日、甲子園)
一振りで試合を決めた。阪神・福留孝介外野手(37)が両軍無得点の八回、今季2号、日本通算200号となる決勝アーチを放ち、広島との首位攻防戦初戦を制した。本拠地・甲子園では9連勝で、4月では球団史上最多となる月間17勝目。貯金は今季最多タイの8とし、広島に1ゲーム差に迫った。
ぬかるんだグラウンドが心地よかった。福留は湿った一塁ベースを蹴ると、思わず右拳を握り締めた。スコアレスの八回、2死走者なし。背番号8がバリントンの直球をこん身のスイングではじき返した。グンと伸びた低空の飛球がバックスクリーン右へ。ベンチのナイン、スタンドを埋めた満員の観客が一斉に両手を突き上げた。
「こういう数字でもまだ使ってもらっているので、何とかしようと思っていた。それが(一塁を)回った瞬間に出たと思う。ベンチに帰ったら、トリやセキ、新井さんが自分のことのように喜んでくれて、うれしかった」
福留の日本球界200号アーチが息詰まる投手戦に終止符を打ち、甲子園9連勝に導いた。お立ち台で鼻をすすったが、メモリアルの感慨は「なかった」。打率1割台で起用される責任感、仲間の温かさ…色んな感情がこみ上げた。
雨天のため30分遅延して開始した首位攻防戦は、七回2死までバリントンの前に走者を1人も出せなかった。21人目の打者、鳥谷が外の変化球を左線に運んだが、得点を刻めない。ただ外角への配球が多い相手バッテリーの傾向を読んで「トリが外の球を強引にいこう、と。同じ左打者なのでそこを意識してみた」と、主将の助言を参考にこの日から採用された「適合球」を思いっきり飛ばした。
4月26日に37歳を迎えた。年齢を重ねるごとに肉体の疲弊と格闘しながら戦場に立っている。左膝を手術した昨季、同じ箇所の重傷を克服したアスリートに勇気をもらった。
メジャー時代に知り合った女子サッカー日本代表、なでしこジャパンのFW丸山桂里奈と大阪で再会。お忍びでなでしこリーグ大阪高槻の試合会場に足を運んだ。途中交代で悔し涙を流す丸山の姿を見て「彼女も日本代表から遠ざかっている。色んな感情があるんだと思う」と、自身の復活への思いと重ねた。
「きょうの一発は今までの1本とは違う。明日もやってくれるでしょう。やってくれ!」。201本目への期待を込め、和田監督はそうゲキを飛ばした。わずかに目を潤ませた福留は「自分の生きる場所を探したい」と、大きくうなずいた。