メッセンジャー自己最多タイ12K完封
「阪神1‐0広島」(29日、甲子園)
行方の見えない天候。そして行方の見えない試合。ただ最後に女神がほほえみを向けたのは、勝利を信じて一心不乱に投げ続ける阪神・メッセンジャーだった。
「両チーム合わせて(安打が)4本しかない試合。しびれましたね」。充足感に満ちた表情が、この1勝の大きさを物語っていた。
立ち上がりから力のある直球に加え、変化球の制球も申し分なし。初となる鶴岡とのコンビで四回までは無安打。八回まで毎回となる自己最多タイの12三振を奪い、二塁を踏ませない快投を演じた。
気持ちのコントロールが呼び込んだ快投だ。打線の援護に恵まれず敗戦が続く日々。勝利を意識すれば力みが生まれる悪循環。さらに試合前から降り続く雨で、マウンドに上がれるか分からないという状況だった。
だが「試合に入る前に自分を抑えた。力みすぎないように心掛けた」と両チーム無得点という緊迫の展開でも、平静を保ち続けた。
和田監督が「1点もやらないという強い気持ちが出ていた」と語る背中に、八回2死から福留が自身通算200号の一発で応える。9回2安打無失点。4月11日以来の2勝目を今季初完封で飾った。テンポのいい投球で、2時間ちょうどで試合を終わらせた。
メモリアルには縁が深い。米大リーグ・ジャイアンツ時代の07年8月7日。AT&Tパークのナショナルズ戦で、バリー・ボンズがメジャー新記録となる通算756号を放った試合に、メッセは中継ぎで登板していた。
「その時も最高の雰囲気だったけど、今日も負けず劣らずの雰囲気だった。阪神ファンは最高のファンだよ」
大歓声が包む超満員の甲子園。その試合で主役の1人となり、喜びは7年前を上回ったはずだ。首位攻防の初戦を取っただけではない。心強い右腕の復調は、1勝以上の価値を生んだ。