梅野が決めた!代打V弾で2位浮上
「中日3‐6阪神」(6日、ナゴド)
ルーキーが一振りで決めた。同点の延長十二回無死一塁、代打で登場した阪神のドラフト4位・梅野隆太郎捕手(22)=福岡大=が、左越えへ値千金の勝ち越し2号2ランを放った。ベンチ入りした25人全員が出場した、今季最長4時間47分の総力戦を若虎の一発で制し、巨人を抜いて再び2位に浮上した。
手に残った感触が違う。冷静沈着な男が興奮を隠せなかった。バットを投げると、左手を突き上げた。白球が歓喜の左翼席へ消える。ベンチ入りした野手として最後に出場した梅野が、一振りで熱戦に決着をつけた。
同点の延長十二回無死一塁。「打撃コーチがバントはないから思い切り行け、と言ってくれて楽になった。ギリギリで(出番が)決まったけどしっかり準備できた。ファーストストライクから振っていこうと思った」。
カウント1ボール。小熊の真ん中への直球を芯でとらえた。決勝2号2ラン。「行ったと思った。前回よりも感触があった」。三塁ベンチ前では出迎えた和田監督からヘルメットをたたかれ、先輩からも手荒い祝福を受けた。「代打で打てる機会が少なかったけど、やっといい場面で打てた」。全身を駆け巡る心地よい快感。自然と笑顔になっていた。
一進一退の展開で九回2死から同点に追いついて、最後に勝ちきった。和田監督は「いろんな意味で効果のある一発だった」。阪神では今季最長の4時間47分の激戦を制する立役者となった新人を手放しでほめた。
アマ時代から“持っている”男だった。福岡大2年時。11年の大学野球選手権2回戦で、東洋大・藤岡(現ロッテ)から2安打を放った。東海大・菅野(現巨人)、明大・野村(現広島)とビッグ3として騒がれていた左腕を攻略。地方リーグに所属する無名選手がプロから注目を浴びるきっかけとなった。
「広い視野を持つことができた転機だった。あの活躍があって日本代表も経験できて、今のままじゃ自分はダメだ、と感じることができた」。つかんだチャンスをステップとして、プロ入りへの道を切り開いてきた。
初のヒーローインタビューでは、梅野コールが止まらなかった。「先輩たちが粘ってここまでしてくれたので、先輩たちのおかげで、今ここに立てたと思う」。梅野が次のステップに進んだ時、チームはさらなる進化を遂げる。