上本、神撃再現や 復帰即タイムリー

 「交流戦、オリックス12-2阪神」(20日、京セラ)

 10年目を迎える「日本生命セ・パ交流戦」が開幕した。阪神はオリックスとの関西ダービーだったが、先発の藤浪晋太郎投手(20)が崩れるなどで、3年連続の黒星スタートとなった。それでも光は見えた。故障で離脱していた上本博紀内野手(27)が1軍に復帰し、1番でスタメン出場。三回に適時三塁打を放ち、復活を証明した。

 大敗から50分後、上本は京セラドームの薄暗い駐車場に姿を見せた。大勢の報道陣に囲まれると歩を緩め、丁寧に取材に応じた。

 「今までと変わらず、特別な感じはないというか…。(離脱は)2週間くらいだったので、ケガする前と変わりなくやれたと思う」

 選手会長が何事もなかったように戦列に戻ってきた。右手親指の骨折から17日。交流戦開幕戦の先発に名を連ね、故障前と遜色ない躍動感で関西対決を沸かせた。藤浪の乱調で試合は序盤に崩れたが、背番号4の追撃打はキラリと輝いた。

 6点を追う三回。藤浪の代打、緒方が右前打で出塁すると、上本が開幕から負け知らずの西を捉えた。追い込まれてから甘い直球をたたき、強いライナーが右中間を割った。復帰2打席目の適時打は、スタンディングスリーベース。173センチのリードオフマンが大歓声に包まれた。

 「甘い球が来たので打てたと思う」。飾り気がないのは、コメントだけではない。車に乗り込む際、完治していないであろう右手親指にはテーピングすら巻かれていなかった。3日のヤクルト戦(神宮)で雄平の放ったライナーがダイレクトで親指に当たり、右手親指末節骨を骨折した。4日に出場選手登録を抹消され、5日から鳴尾浜でリハビリを開始。トレーナー陣から全治期間は明らかにされず、実戦復帰は上本の自己申告に委ねられた。

 17、18日に2軍で連戦に臨んだが、フル出場した2戦目にちょっとしたアクシデントがあった。五回にオリックス東野の投球が顔付近を通過。のけぞった際にとっさに右手を地面について体を支えた。案じたトレーナーが近寄ると「問題ないです」と平然。痛みを和らげるために、患部にパッドを挟む選択肢もあるが、バットを握る感覚を大事にする上本はこれを拒んだ。

 和田監督は「上本が戻ってきたことで打線は落ち着くと思う」と、揺るぎない信頼を寄せた。驚異的な回復…などと騒いでほしくない。試合に出られるから、出る。上本はそう言いたげだった。

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