呉昇桓さすが締め!虎ついにコイと1差
「交流戦、ソフトバンク3‐4阪神」(24日、ヤフオク)
この男は動じない。1点リードの九回に登板した阪神の守護神・呉昇桓投手(31)は無死一、二塁のピンチを背負ったが、後続を仕留めてリーグ単独トップの12セーブ目を挙げた。投手陣の踏ん張りで、セ・リーグ首位の広島に1ゲーム差に迫った。25日からは甲子園でロッテ戦。本拠地で首位浮上といきたい。
絶体絶命のピンチを背負った。さすがの石仏にも動揺の色がにじんでもおかしくなかった。1点差の無死一、二塁‐。バックスクリーンを見つめ、一息ついて振り返った呉昇桓。だがそこには舞台が整ったと言わんばかりに、冷徹な視線を向ける右腕がいた。
先頭の長谷川、続く李大浩に連打を浴びた。韓国代表でともに戦った同胞、そしてライバルに痛烈な左前打を許しても「長打さえ打たれなければ良かった」と、脳内は至ってクールだった。ともに変化球を打たれた状況を冷静に分析し、ギアを変えた守護神。続く松田をオール石直球で二飛にねじ伏せた。
さらに圧倒的なパワーを持つ柳田には追い込んでから立て続けに首を振った。女房役の鶴岡は外角を要求したが、呉昇桓のチョイスは内角。一発の危険性を150キロ超のストレートでかき消し、力の差を見せつけて二ゴロに打ち取った。
最後は一、三塁から本多を148キロのハイボールで中飛。勝利の瞬間、派手なガッツポーズもなかった。当たり前の仕事をしただけ‐。圧倒的なたたずまいで敵地の空気を支配する男に、和田監督は「一番、きついところで良く投げてくれた。あそこ(ピンチ)から抑えるのが真骨頂」と賛辞を惜しまない。
ピンチになってから投じたボールはすべて石直球。日本への移籍が決まった昨オフ、自ら趣味のゴルフを断った。相当な腕前にもかかわらず、クラブを置いた。理由はダフった際に古傷の右肘を痛める危険性があったためだ。
アマ時代に断裂したじん帯を保護するため、筋肉で“鋼鉄の鎧”をつくり上げてきた。石直球の源が一瞬にして無に帰すだけではない。母国の期待を裏切らないために‐。卓越したプロ意識と誇りがあるからこそ、守護神は簡単に揺るがない。
「とにかくヒットを打たれたくなかった。詰まったのは運が良かった」と冷静に振り返った呉昇桓。リーグ単独トップの12セーブ目で、首位・広島とはついに1ゲーム差。背番号22が決壊する姿は今、想像すらできない。