能見4戦連続2桁奪三振!江夏に並んだ
「交流戦、阪神3‐4オリックス」(6日、甲子園)
エースの顔に笑顔はなかった。阪神・能見篤史投手(35)はオリックス打線から10三振を奪い、4試合連続の2桁奪三振をマーク。1971年の江夏豊に並ぶ球団記録で、セ・リーグのタイ記録。球史に名を刻んだが、チームは逆転負け。記録を勝利で飾ることはできなかった。
勝負の流れは、この日の天気のように移り変わる。偉大な先人に並ぶ記録を達成したエースも、最も欲した勝利は目前で、その手をすり抜けていった。
開始前から小雨が降り続くマウンド。それでも能見の粘投は光を放った。初回1死一塁から糸井、ペーニャを連続三振。二回1死からもT‐岡田、縞田を連続三振。その1つ1つが、左腕を価値ある記録へと近づけた。
そして、2点の援護を受けて迎えた七回だ。先頭の代打・中村を空振り三振に斬り、この日10個目の三振を奪う。71年の江夏豊氏に並ぶ4試合連続2桁奪三振の球団タイ記録を達成した瞬間だった。
ただ「勝てるのが一番。それ(記録)がどうこうはないし、気にしていない」と話していた能見。エースの称号を背負う左腕だからこそ、名誉ではなく勝利こそが自身を満足させる唯一の要素だ。
相手先発はエース・金子。この勝負を取る意味の大きさは知っている。2点リードの六回1死一、二塁でも、中軸から連続で見逃しの三振を奪う。グラブを左手でたたき気迫をみせた姿に、懸ける思いの強さが表れた。
いつのまにか雨脚が止まった空模様。だが、試合が急展開をみせたのは3点リードの八回だ。「いっぱいいっぱいだった。(後はアウトの)積み重ねで」。それ以上の言葉が続かないほど、エースが悔やんだのは、先頭のヘルマンに与えたストレートの四球だった。
そこから1点を失い、なお1死二塁としたところで福原にバトンを渡す。だが、待っていたのは2死一、三塁からのT‐岡田の逆転3ラン。大事なカード初戦、金子とのエース対決。その重みを知ればこそ、力投の中で体力が失われていた。
中西投手コーチも「真っすぐ、変化球のコンビネーションもよかった。(八回の)先頭の四球だな。急にスピードも落ちた」と左腕の変調を語った。試合最終盤に降り出した豪雨は、能見の無念の涙雨か‐。存在感は示した。次こそは、勝利の輪の中心で晴れやかな笑みを見せたい。