鳥谷逆転弾!1イニング最多9点呼んだ
「交流戦、阪神14‐8ソフトバンク」(8日、甲子園)
ようやく先手を取った。阪神が11カードぶりの初戦白星。甲子園の連敗も4で止めた。1点ビハインドの初回、鳥谷敬内野手(32)の逆転2ランを皮切りに、四球を挟み6連打など打者14人8安打、先発全員得点となる9得点を挙げた。先発榎田の乱調や守備の乱れで8失点を喫しただけに、文字通りのビッグイニングとなった。
たった1人で主導権を持ってきた。18安打14得点の猛爆、そして11カードぶりの初戦白星を演出したのは間違いなく鳥谷だ。それほど効果的だった逆転2ランを含む3安打。相手に流れを渡しそうな状況を、ことごとく主将がせき止めた。
先制され、嫌な空気が漂う聖地に響いた快音が、大爆発の号砲だった。1点を追う初回1死三塁での第1打席。オセゲラが投じた初球、内角シュートを完ぺきにはじき返した。これまで聞いたことのないような打球音を残し、右翼ポール際に突き刺さった5号逆転2ラン。「大和が何とか三塁まで進めてくれたので、楽に入れた」と語る一発が、眠れる猛虎をたたき起こした。
ゴメス、マートン、新井…面白いように連打が積み重なる。梅野がたまった走者を一掃し、2死からも大和、ゴメスにタイムリーが生まれ、攻撃の手を緩めなかった。打者14人で繰り出した8安打、今季最多となる1イニング先発全員の9得点。ただ価値あるヒットは、これだけではない。
「三回の1点、あそこが大きかった。2死三塁から流れを引き戻してくれた」と和田監督が最敬礼したように、3点差に迫られた直後、1死三塁から大和が2球目の難しい変化球を打って三飛に倒れた。無得点で終われば相手が勢いづく場面だった。それでも鳥谷が追い込まれながらも左前にはじき返し、主導権を渡さなかった。
再び3点差に迫られた五回も、1死一塁から大和の盗塁死で嫌なムードが漂う中、右前打で出塁しマートンの右前適時打で生還。「そこはカバーのし合いですから」。キャプテンはそう力を込める。
「自分も年齢的に中堅になったんで、下の子がやりやすいように」。キャンプ中、鳥谷はこう自らの立ち位置を口にした。主将という立場だけではない。優勝するために、どれだけ若手の失敗を主力がカバーできるか‐。
その姿勢が打線のつながりを生み、負けが込む中で失われつつある勢いを呼び戻す。強力打線に打ち勝った1勝。その中心にいたのが鳥谷だという事実が、何よりも大きい。